02/06の日記

10:07
少女山月記
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鱗に覆われた翼を動かし風を切る。
雪積もる谷底に命在るものは私だけだろう。

ここは地獄か。



「……ふえ、ぅえ、」

14年生きて、15になった夜手に入れたこの醜い翼。
望んだわけでもないのに、何故かこいつは私の背からもう一対の腕のように生えてきた。

「あああああああっ!」

静寂に耐えきれず叫びをあげるが、私の声は谷底に重く沈むだけで誰も応えない。そもそも誰もいない。



黒い岩肌は、緩やかに降り積もる雪に覆われていく。


世界は白くなる。


白くなりゆく谷を飛ぶ私の翼だけが、いつまでも黒いままだった。

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