中編
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サアアアアァァァ………
春の優しい風が頬を撫でる。
ふわりと舞う桜。
「…咲良。」
ふと、声を掛けられる。
『…骸』
歩み寄り、隣に並ぶ。
2人はただ黙って舞う桜を見つめていた。
『春は好きだよ。
このやさしい風が好き。
この舞う桜が好き。
それに、桜は―――』
咲良は途中で口を噤む。
「それに、桜は―――なんですか?」
骸が聞くと、漸く口を開いた。
『それに桜は――― ―――――――――』
それを聞くと、骸は一瞬目を見開き、驚いた顔をした。
「…そうですか?」
『うん、そうだよ。
だから――春が好き。』
骸は?と咲良は骸に質問を投げかける。
「僕は―――咲良が好きなら、僕も好きですよ」
『…ぷっ、なにそれ』
そして、2人は笑いあった。
幸せな時。
この幸せはいつまで続くのか。
幸せとは案外あっけなく崩れるものだ。
(一時の幸せ)
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