中編
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―――プロポーズの翌日。
今、咲良はドレスアップして貰っている。
昨日の今日、といった感じだが、実は骸やボンゴレの幹部やその知り合いが、数日前から準備してくれていたらしい。
本当に恵まれている、と咲良は思う。
もう間近に死が迫っているというのに、たくさんの人に祝福され、最愛の人と幸せになる。
誰かに恨まれそうなくらいだ、と咲良は思う。
それでも、恨まれてもいい、と思えるくらい、今、咲良は―――最高に幸せなのだ。
ドレスアップが終わり、骸と腕を組む。
…ここで付け加えておくが、会場は教会である。
「咲良、似合ってますよ」
咲良は肩を出した純白のドレスを身に纏っている。化粧はシンプルに、けれどそのシンプルな化粧がより一層咲良を美しくしていた。
『骸も、似合ってるよ。今までで一番、かっこいい。』
一方骸は、漆黒のスーツ。ネクタイは灰色だ。漆黒のスーツが藍色の髪と赤と青のオッドアイに合っている。
純白と漆黒。正反対の色だが、2人が着ると白と黒のコントラストが絶妙なバランスで、2人の容姿秀麗さを引き立てていた。
「惚れ直しましたか?」
『―――ばか。惚れ直しなんてできないくらい、もう私は貴方の虜なんだよ?これ以上惚れさせてどうするつもり?』
「どうもしませんよ…―――ただ、貴女への愛がよりいっそう深まるだけです」
『…本当に、幸せだなぁ』
「何を言っているんです?これから、もっと幸せになりに行くんですよ―――」
祝福してくれる人達のいる場所へ繋がる大きな扉を、使用人たちが一斉に開ける。
途端、聞こえてきた拍手と祝福の声。
そして、2人は腕を組んだまま、中央の道を進んでいく。
教壇の前に着くと、2人は向かい合った。
牧師が静かに誓いの言葉を紡ぐ。
「新郎骸、あなたはここにいる咲良を、
病める時も、
健やかなる時も、
富める時も、
貧しき時も、
妻として愛し、敬い、慈しむことを―――
誓いますか?」
「――誓います。」
「新婦咲良、あなたはここにいる骸を、
病める時も、
健やかなる時も、
富める時も、
貧しき時も、
夫として愛し、敬い、慈しむことを―――
誓いますか?」
『―――誓います。』
「それでは―――誓いのキスを。」
2人の顔が少しずつ近づき、そして―――触れ合った。
そして、また拍手と祝福の声が上がる。
すると、咲良の目から涙が零れる。
「…どうしたんですか?」
骸が心配そうに顔を覗き込む。
『ううん。何にもないの。ただ――――
本当に、幸せだな、って。』
本当に、嬉しくて。本当に、幸せで。
満たされていくような感覚に、暫く咲良の目から涙が枯れることはなかった。
Felicità、Ed io L'amo.
(幸せ、そして、貴方を愛してる。)
あと、3日――――
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