短編

□少しだけ。
1ページ/2ページ











これは、ただの独白だ。




ただの――戯言だ。




無視してくれたって構わない。





少し、少しだけ、話してもいいだろうか。




私は、幼い頃から不幸だった。





何故か、周りから忌み嫌われた。





実の両親でさえ。





私は何もしなかった。




ただただ、その運命を受け入れた。





ああ、私は忌み嫌われる運命なんだ、と。




だから、私は受け入れた。





けれど――少しだけ、悲しかった。




ほんの少しだけ、寂しかった。






思えば、いつも忌み嫌われることが悲しくて、
辛くて、寂しかった。





そして、いつしか、幸せになりたい、と思う
ようになった。





けれど、いくら幸せになりたい、と願っても
幸せにはなれなかった。





そう――今も。





「もう…嫌だ…!こんな気味の悪い子供…!!


殺してやる!!!!!」





ほら、ね。





実の母親に殺されそうになっている。





なんて不幸なんだろうか。





そして私は、自然に、それが当たり前である
ように近くにあったカッターを手に取った。





「っぁぁああああああぁあああ!!!!」





母親は叫びながら包丁を振りかざした。




   ・・・・・・・・・
…否、振りかざそうとした。





ザクッ ブシャァァァッ




その前に私が頸動脈を切った。






『…ふぅん…』




特に何も感じなかった。




こんな私はやっぱり異常なのだろうか。





『やっちゃったか』





それだけだった。










次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ