烏の群れの中で

□持っていく!
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「ボールは俺が持っていく!」


影山のその言葉だけ聞こえた。
他にも何か話しているけど、聞こえない。


『何を考えてるのでしょう。』
「でも、少なくともあのトスじゃ今の日向が合わせるのは無理だぞ…」
『ですよね…』


菅原と二人で影山を見る。



『でも、すっごい集中力…』

今日、初めてみた影山の集中力にゾクっとした。


影山のボールより先に日向が飛ぶー…。



ドバンッ、とボールの音がする。


『う、そ……』

「手に当たったあああ!!!」


日向の嬉しそうな声が聞こえる。


『今、ひな、た……』
「目え瞑ってたぞ…」


「「はア!?」」


私の位置からはほとんど見ることが出来なかったけど、
ジャンプする瞬間は少なくとも瞑ってた。


大地さんはちゃんと見えたんだ、やっぱり。
スイングも目を瞑っていたと。

「影山がボールを全く見ない日向の掌ピンポイントにトスを上げたんだ…」
『スイングの瞬間に合わせて、寸分の狂いもなく…?』


そんなセッター、初めて見た。
狂いもなく合わせる影山もすごいけど、
ボールはここに来ると信じて飛ぶなんて普通できない…。


「だって信じる以外の方法わかんねえもん!!」


『日向は真っすぐだなあ…』
「そうだな。あんな奴初めてかもな」

私の呟きを聞いていたのかスガさんが返してくれる。


『試合の流れが変わりますね、きっと』


さっきの速攻を着実と自分たちの物にしようと何度も挑戦する二人。


顔面にトス当たってるのなんて滅多に見ないけど…。



「トスの精度がすごい勢いで増していく…!」


横で一緒に試合を見ているスガさんが呟く。
確かに、速攻の成功率が確実に上がってる。


『…スガさん、お母さんみたいな表情してますよ?』
「え、それどんな表情…」
『我が子を見るような?』
「うーん…まあ。セッターとしての本領を発揮できてるのは日向のおかげなんだよなあって思ってたけどさ。」
『スガさんも朝練付き合ってたんですもんね』

そりゃ、お母さんみたくなるわけですね。

「ちょ、何で知って…」
『龍ですから。大丈夫ですよ、大地さんには言ってませんし』
「ビックリした、大地にバレてたらどうしようかと思ったべ…」
『えへへ、すみません』


でも、薄々気づいているとは思うんだよね。
龍が鍵の当番やるって言った時点ですごく怪しかったし。

いつも時間ギリギリなのに。

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