恋を知りました

□ジャージ
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「−い、おい、ごんべ」
『…ん、』
「目が覚めたな」
『……な、んで』

岩泉くんがどうしているんだろう。
私、いつの間にか寝てたんだ。


「授業終わっても戻らねえから心配したぞ」
『…心配されるようなことしてませんけど』
「…お前、かわいくねえな」

何で今日初めて話した人にそんなこと言われなきゃいけないんだろう。


『…で、何しに来たんですか。』
「あぁ、これ渡しに。」
『…ジャージ、これ、私のじゃないですが』
「これは俺のジャージだ」


この人は何を言っているのだろうか。
岩泉くんのジャージをどうして私に渡すんだろう。


「制服、乾いたところで砂利とかで汚くなってるだろ?」

あー…確かに。
全く考えてなかった。


「どうせもう放課後だ。ジャージ姿で歩いても不思議じゃないだろ」
『……はあ』

放課後になっているんだ。
どうやら結構寝ていたらしい。


「だからこれ使えよ」
『いや、別になくても…』
「その制服で変に目立つの嫌だろ」
『……』

確かに、変な目で見られて目立ったらどうしよう。
先生とかに見つかったら言い訳考えるのめんどくさいな。

でも、岩泉くんに借りを作るのも嫌だ。
後で何を要求されるかわからない。


「…何考えてるか知らねえけど、俺部活だから行くわ」


ジャージを置いたまま去っていく。


『…仕方ない。今回だけ。』


何か、お礼の物を先に渡せばいいかな。
これ以上の物はありませんと。


でも、このジャージかなりでかい。
まあ、そうだよね。男の人のだもんね。


……久しぶりに温かい、と思ってしまった。

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