恋を知りました

□バレー部
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「岩泉くんに取り入って及川くんと仲良くなろうとか思ってないよね?」
『……』
「…何とか言えよ」

課題の件で及川ファンだという数人の女子たちから問い詰められた。
ファンクラブ、本当に存在していたんだ。
凄い人だ、及川くん。

「ちょっと美人だからって調子乗んなよ」

押し倒され、髪を引っ張られる。

「さすがっ、感情ないって本当なんだ?」

何をしても表情一つ変えず、
されるがままのななし。

「つまんな。もっと嫌がること考えなきゃねー」
「あれね、周りにはバレないやつね!後めんどいし」

次はどうするか話しながら去っていく。

『…よくもまあ放課後に堂々と。』

いくら体育館の裏だからといっても、
部活動というものがあるわけで。

下手したらバレるかもしれないのに。
頭の回らない女子たちだった。

に、しても痛かった。
ちゃんと表情変えなかったよね…。
うん、だから感情ないって言われたんだもんね。
隠せてる。大丈夫。


「…ごんべ、お前何してんだ」
『…お疲れ様です。』

何でここにいるんですか。
……岩泉くん。

「…大丈夫か」
『…何が』
「怪我は」
『何もないですけど』
「嘘だ。」
『嘘じゃないです。』
「じゃあ、その痛そうにしてる顔はなんだ?」
『っ…そんな顔してません』

表情に出てる…?
いや、でも、そんなはず…

「怪我、ねえならいいけど。そのぐしゃぐしゃな髪、直さないとバレるぞ」
『…はい』

これは、仕方がない。
直そうと思ったときにあなたが来たんだから。

『…何で、ここに』

髪を直し終えて聞く。

「この体育館、バレー部の練習で使ってんだ」
『…バレー部』

どうやら岩泉くんは男子バレー部らしい。
たまたま声が聞こえて来てみたそうだ。
来なくてよかったのに。

と、いうことは
あの子たちはそのままバレーの練習を観に行ったってことになるのかな。

『…ホント、バカだなー』
「あ?」
『あ、岩泉くんのことじゃないです……』
「じゃあ、だれ―」
「あれ、岩ちゃん休憩終わるよ?」

戻ってこない岩泉を心配してか及川が現れた。

「ごんべさんだねえ。こんなところで何してるの?」
『…』
「あ、まさか俺の練習観に来てくれたとか!」
『…失礼します』
「うわー…完全無視」
「…じゃあな、ごんべ」
『…はい。頑張ってください』
「何で岩ちゃんには普通なの?!」

…何でと言われても。
岩泉くんの方が話すから。
及川さんとは関わりたくないんだよね。
ファンの子多いし、誤解が生まれやすい。

「…いいなあ、岩ちゃん」
「あ?」
「だってごんべさんに頑張ってって。ちゃんと会話出来てるじゃん」
「あー…」

心にも思ってねえだろうけどな。
頑張ってなんか。

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