恋を知りました

□泣きそうな
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「…なんでだろうな」
『…はい?』
「よくわかんねえけど」

真っ直ぐと私の方を見ている岩泉くん。
…何か言おうか迷っている感じがする。

『…私は、出来れば誰とも関わりたくない、です。』
「知ってる」
『岩泉くんと会話するのも、言ってしまえば弱みを握られているからで』
「それも知ってる」
『じゃあ、どうして』
「…一つハッキリしてるのは、泣きそうな顔していたからだな」
『は、い?』
「初めてここで会った日、お前が泣きそうな顔してたから気になるんだよ」

初めてここで会った、というのは
ジャージを借りることになった日で。
私はいるも通り不愛想に淡々と返答をしたはずで泣きそうな顔なんてしていない。

「周りに何て言われてるか知らねえけど、俺は何となくわかる気がする」

チラッと岩泉くんを見れば真っ直ぐ私を見ている。
あまりにも真っ直ぐ過ぎて目が、逸らせなくなった。

『…嬉しくないですよ』
「知ってる」
『……教室戻ります』

何て答えるのが正解だったんだろう。

一番手っ取り早く嫌われる方法って何だろう。
だって、どうせすぐに飽きるはず。

今までそうだったように、
今回だって。

「ごんべ」
『…はい』
「ごちそーさん」

ちゃんと岩泉くんの笑顔を見た気がした。

『…どーも』
「一緒に戻るか?」
『遠慮します。』
「だろうな」

やっぱり、温かいと思ってしまった。

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