恋を知りました

□頼まれ事
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「あ、ごんべ。丁度良い所に」
『…先生』

放課後、私以外誰もいない教室にやってきた担任。

「ちょっと頼まれ事してくれ」
『…嫌です』
「まあ、そう言わずに。これ岩泉に渡してくれ」
『…嫌で、』
「俺これから会議なんだ。よろしくな」

私の意見は無視ですね。
どうして岩泉くんのノートを私が渡さなければいけないのだろう。
しかも、この時間は確実に部活中な訳で。
あの場所に行かなければならない。

『はあ…』

ノートを手にしてバレー部の練習している体育館に足を進める。
…さっさと渡して今日はもう帰ろう。


…と、思ったんだけど。
どうやって声かけたらいいんだろう。
何だか女子生徒もたくさんいるし声を掛けたら目立つ。無理。
入口の隅っこで隠れながら見てみるけど…
声を掛けれるようなチャンスはない。

……よし、もう少し待ってから伺おう。
と、何度か行っては戻りを繰り返していたら部活が終わる時間。

ヤバい。
目立っても渡しておけば良かったんじゃないか。

そして、岩泉くんの姿が見えない。
もう帰っちゃったのかな。
結局ノート渡せてない…。

『…やばい』
「何がヤバいんだ?」
『…岩、泉くん』

後ろから声が聞こえて振り向くとジャージ姿の岩泉くん。
鞄を持っているってことはもう帰るところだったのかな。

「こんな所で何してんだ?」
『…岩泉くんにこれを」

ようやく預かっていたノートを渡す。
パラパラとノートの中身を確認する岩泉くん

「サンキュー。これ必要だったんだわ」
『遅くなってすいません…』
「…まさか、これ渡すためにこんな時間まで待ってたのか?」
『……ええ、まあ』
「なんかすまん」

待ってたのは私が悪い。

「…これから帰るのか?」
『…あ、はい』
「……送ってく」
『え、嫌です』
「そうだろうと思った」

わざわざ送ってもらうようなことはしていない。
人に家を教えるなんて無理。

「あ、いた!岩ちゃん帰ろー。…あれ、ごんべさん」

岩泉くんを探していたのか及川くんがやって来た。

「わりぃ。俺、こいつ送ってくから」
「えっ!?」
『いや、だから…』
「ほら、帰んぞ」
『ちょっ…』
「岩ちゃん!?」

及川くんが何か言おうとしているのを無視して
私の腕を掴み歩いていく。
待って。
私の意見は無視ですか。

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