series

□ちょっとしたヤキモチ
1ページ/1ページ

『黒尾、うるさい』
「えー、俺が何したって」
『はあ…』

夏休み
烏野高校男子バレー部は合宿のために
東京…埼玉の森然高校にお邪魔している。

黒尾とは前のゴミ捨て場の決戦で知り合い
合宿中絡まれることが多い。
…非常に。

「ごんべちゃんー、いい加減教えてよー」
『だから、いないってば』

教えてっていうのは私に彼氏がいるかどうかっていう話で
ずーっといないと言い張っている。

「ふーん?じゃあ、俺と付き合おっか」
『嫌でーす』
「そんな冷たいねえ」
『暑いから丁度いいんじゃない?』
「暑いからこそもっと暑くっていうじゃん?」
『言わない』

烏野のマネの中で一番からかいやすいと思われたのだろう。
事ある事に絡まれる、迷惑な話だ。

「実際いい物件だと思うよー、俺」
『…どこが』
「優しいし、イケメンだし」

自分で言うあたり本当にうざい。
とりあえず冷たい視線だけ送って逃げよう。

『黒尾、私準備あるから』
「えー、そんな事言わずにっ、」
「黒尾ー…」
「ゲッ、やっくん」

おお。
夜久さんやっと気づいて助けてくれた!
有難う!でも遅いっす!

やっと洗濯しに行けると勢いよく体育館を出てみるも
外も変わらず暑い事で…

「…あの、」
『…あれ、月島?』
「…」

ジッと私を見たままの月島の姿。
珍しい。…非常に珍しい。

『どうかしたの?』
「…黒尾さんと、仲良いんですね」
『え、まあ。…良く話すね』
「…黒尾さんのこと好きなんですか」
『……ふふっ』

いや、笑っちゃダメなんだけど。
でもなんかもう、ホント。

「笑う所じゃなないんですケド」
『ごめん。でも、月島からそんな言葉か出てくるとは思わなくて』
「…」

うわ、顔顰めてる。
ちょっとこれは思った以上に可愛いぞ。

『ホントごめんって。蛍』

とりあえず、月島…
蛍の傍まで寄り精一杯の背伸びで蛍の髪をぐしゃぐしゃにしてみる。
相変わらずデカいなー…

「ちょっとっ…」
『黒尾にヤキモチ?』
「…だったら何ですか」
『いやー?可愛いなーって』
「……」
『私は蛍一筋なのに』

二つ下の蛍と付き合い始めたのはいつだったか。
特に聞かれなかったから殆ど周りには付き合ってることを話していない。

あ、でも。
黒尾には適当にあしらったっけ。

だけど蛍の方は違う気がして。
自分から言うようなタイプでもないし、
からかわれるのも嫌だろうし。

だから、皆の前では月島って呼ぶようにはしていた、んだけど。

『それより練習、戻らなくていいの?』

そろそろ戻らないと試合が始まるし、
私も自分の仕事をしなければ。

「…戻るケド」
『けど?』
「ななしさん」
『ん?』

グイッと手を引かれ来た道を戻り始める蛍。
私の行きたいと所そっちじゃない…

「僕の傍から離れないでください」
『…皆に付き合ってる事知られちゃうよ?』
「…嫌なんですか」

ピタッと立ち止まり私に目を向ける。

『いや、私は全然おっけーだけど』
「…じゃ、いいですよね」
『う、うん』

何だ。
蛍は嫌なのかと思ってた私がバカみたい。

結局私は手をひかれたまま体育館へ戻っていく。
後で大地と清子に怒られよう、うん。
そうして戻れば一番最初に気づいたのはさっきまで私をからかっていた黒尾だ。

「おやー?お二人さんってそういう仲?」

その言葉に数人、位の視線が集まる。

あー、視線が痛いわー。
そりゃそうだよね、今まで黙ってたわけだし?
隠しててすんません。

「そういう仲なので、」
「へえー…」
『……黒尾、気づいてたでしょ』
「なんでそう思う?」
『そんな顔してる』

いかにも待ってましたって顔。
さては蛍に嫉妬させるために私に絡んできたな。
…なんて人だ。

「…どっちでもいいですケド、ななしさんは僕の物なのでちょっかい出しても無駄ですよ」
『…だ、そうですよ。黒尾』

嫉妬した蛍は黒尾のおもちゃには向いてないっぽい。
残念だったね。

『ほら、蛍練習始まるって』
「ななしさんも一緒ですよ」
『いや、私には洗濯がっ、あっ』

体育館まで来たのと同じように手をひかれ自分たちのコートまで戻っていく。

…仕方ない。
試合が始まったら抜け出そう。

…けど、ま。
嬉しかったから後で甘えようっと。

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ