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□期待を込めて
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『チョコ、ワタス。』

今日はバレンタイン。そう、バレンタイン。
男子バレー部のマネージャーをしている私は
毎年想いの彼にチョコは渡せている。
部活の仲間として。部員全員に配っているやつ。

だがしかし、本命チョコは渡せず
2年間自分の胃袋に収めてしまっているのである。

そもそも3年の私たちは既に引退している。
イコール部活に出ない。どうしよう。

で、放課後に至った次第でございます。

「で、あんたいつ渡すの?」
『ちょっともう無理な気しかしない』

何せ放課後。
タイミングを伺っていたら放課後です。

『……とにかく、ヤロー達にチョコ渡してくる。』


田中・西谷辺りが待ってる。

チョコの入った袋を持って立ち上がる。


「あれ、まだいたんだ?」
『すが、わらっ…』

まだ帰っていなかったらしい菅原が入ってきた。
そう、私は菅原に3年間片思い中だ。

「頑張れー」と言葉を残して友が去っていく。
あ、待って。心の準備が!!

「それ、今年も俺の分あるの?」
『へ、あ、うん。』

菅原が言うそれは私が持っているチョコの入った袋の事だ。

けれど、菅原に本当に渡したいチョコはカバンの中。
厳重に隠してます。

「あいつらに渡す前に、先に貰っていいべ?」
『……う、うん』

これは、チャンスだ。
ここであげられなければもう一生渡せない。
最後の、最後のバレンタイン…。

『あ、のさっ…菅原はこっちのチョコ…!』

緊張しすぎて吃ってしまったけど、
綺麗にラッピングしたチョコをカバンから取り出す。

「……え」
『こちらを、どーぞ』
「これはー…本命って捉えていいのかな」
『…え、と。本命です…!!』
「……やっと貰えたべー」

二カッと笑いながら私のチョコを受け取ってくれる菅原の言葉に一瞬思考回路が停止した。

つまり、これは。
そういうことなのだろうか。
いや、期待を込めて言ってしまえ!

『菅原がずっと好きでした!!』

気持ちを伝えてしまえば案外スッキリするものだなーって思っていたら

「みほさん!!チョコください!!」って教室まで押しかけてきた西谷・田中ホント本気空気読んで。

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