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□一日遅れの
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ああああああっ。
やってしまった。

『結局渡せませんでした。』
「あららー…」

昨日はバレンタイン。
気合を入れて作ったのに。のにっ…!!

「んで、案の定だったわけ?」
『ええ。それはもう木兎さん邪魔でして』
「それはもう予想してたでしょ」
『そうなんだけどっ…そうなんだけどさあ!』

いかん。
友人に八つ当たりしてしまった。

「無理だって判ってんなら下駄箱にでも入れてたらよかったじゃん?」
『だって…折角なら直接渡したいなって。』
「あー、そう。で、何で今日も持ってきてるの?」
『もう一度チャレンジしようかと!ダメなら諦めて下駄箱に入れます。』
「それ、フラグ?」

一生懸命作ったんだもん。
それを自分の胃袋の中に消化して来年まで我慢するくらいなら、
一日遅れたって渡したい。


渡したい。…のにー!!


『ダメだ…』

結局、本日も木兎さんがくっついている。
本当に仲がよろしいことで。
さっきも体育館覘いてみたけど練習中だったし。

下駄箱に入れて帰ろう。
と、今現在赤葦くんの下駄箱の前。
違う。不審者とかじゃ決してありません。

こっちから呼び出す度胸もないのに…
何で直接渡したいとか思ったんだろう。

そもそも私の事知ってるのだろうか。
彼とは一年の時、同じ委員会をやっていただけで
一目惚れした私がこっそり練習とか見てただけで彼は気づいていない。
渡したところでポカンとされるだけだ。


「ごんべ、さん?」
『ひっ…赤、葦くん!?』

何でここに赤葦くんが。

聞けば教室に忘れ物をしたらしい。
違う、今はそうじゃない。
問題なのは私がクラスも違う赤葦くんの下駄箱の前で突っ立っていたということだ。

「…それ、誰に渡そうとしてたんですか?」
『え?」

それ、とは私が手に持っているチョコの事だろう。

「よくバレー部見に来ますよね。昨日もそれを持って覗いていましたし。」
『えっ…知ってたの…』
「まあ、はい」

私としてはバレないように見ていたつもりなのに。
恥ずかしい。

「ここに居るということは僕にで合ってますか?」
『……アッテマス』

淡々と言うってことは迷惑だったのかな。
ちょっと泣きそう。

「そうですか。すごく嬉しいです。」
『すいません。……え?』
「昨日の時点で貰えないと思っていたので。」
『え?』

待って。話が噛み合わない。
迷惑ではないってことでしょうか。

「木兎さんから離れたらもうごんべさんいなくなっていたので諦められてしまったものと」
『し、知ってたの…?』
「まあ、結構視線感じてましたし」
『うっ…申し訳ないです』
「謝ることですか?僕は寧ろ嬉しかったですけど」
『う、うれしっ?!』

スッと私の手にあったチョコを赤葦くんが取る。


「前からごんべさんが好きでした。だからください。」
『……好きです。…あ、赤葦くんのために一生懸命作りました!!』



(ホワイトデーは当日にお返ししますね)
(ホントすいませんっ…!)

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