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□慌てる必要なんてない
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『…け、けんまくっ…!』

ズデン。
と、盛大に転んだのはマネージャーのななし。

「ななし、大丈夫?」

転ぶような物なんてないはずなのに。
そんな場所でもよく転んでいる。

「おーい、救急箱持ってこーい」

クロが気づいて声をかける。
一応、部員用の救急箱があるけど
基本使うのはななしだと思う。

『…あー、いつもすみません。』

ムクりと起き上がる。

「…うん」

目の前で転ばれるとさすがにビックリする。

「ほら、膝みせてみな」
『はい…』

夜久くんが慣れた手つきで手当をする。

「ななしは怪我だらけだなー」
『すみません…』
「何も無いところでしょっちゅう転ぶとか才能だわ」

クロがいつもの様にななしの事をからかい始める。

『…膝と心が痛い。』
「膝はともかく、心は黒尾が悪いな」
『ううー、夜久さーん!』

おー、よしよしって宥めてる姿を見ると
兄妹に見えてくる時がある。

「そんなに体に傷ばっか付けてたら一生嫁になんかいけねーぞ?」
『なっ…そんなことないないですよ!』
「なんなら、俺がもらってやろーか?」

クククッと笑いながら言っている所をみると、
クロは絶対に楽しんでいる。

『結構ですっ!その時は研磨くんにもらってもらいますから!!』
「……え」
『あっ…』

ななしの顔がみるみる赤くなっていく。
…どうやらクロは分かってて言ったらしい。
すごく、ニヤニヤしながらこっち見てる。

『いいいまの忘れてください!…あっ!ちょっと部室行ってきます!』

完全に慌てたななしは夜久さんにお礼だけ言って体育館から出て行ってしまった。

「研磨ー、追いかけなくていいのかよ」
「…クロ、うるさい」

そもそもクロがあんなこというから悪いんだけど…

「黒尾、ちょっとこっち来い」

夜久くんがクロを呼んだってことはもういいかな。
とりあえず、部室に行けばいると思う。

…別に慌てる必要なんてなかったのに。

(…見つけた)
(け、研磨くんっ!?)

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