小説

□買い物日和
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最近、会社の終わった後、数日に一度、同僚の坂田とスーパーに寄る。

俺の食生活は、坂田の目にはおかしく映ったらしい。

互いに残業で夜中まで残っていた時に、俺が夜食に食べていたカップ麺のマヨネーズ掛けを見咎められた。
家でも似たようなもんだと言ったら、更に、はあ!?と盛大に驚かれてしまった。

カップ麺とマヨネーズと水があれば、取り合えずしばらくは生きていけるぞ、と言ったのだが、聞いてるこっちが死ぬわと殴られる始末。

そして、その数日後、坂田の部屋で晩飯の相伴に預かったのだが、確かに坂田の作る飯は美味かった。

しかも、一人分も二人分も別に変わらないから、お前が良ければ一緒に作るけど、と言ってくれたので、やや申し訳なく思いながらも、有り難くお願いすることにした。

それから三日に一度くらい、互いに別の用事がない限りは一緒に、終業後そのままスーパーに寄って帰るという流れになっている。
食費はその都度の折半だ。
(作ってもらう分、多く払うと言ったのだが、坂田は半分でいいと譲らなかった)

社宅のアパートの部屋も隣で、作ってもらう身であるので、一緒に買い物に行くのは全く構わない。

だが。
俺がいても、意味があるのかどうか、という気もしている。

今日も坂田は慣れた手つきで、ひょいひょい野菜やら肉やらをカートに放り込んでいく。

野菜はくるりとひっくり返して、違うものにしたりする。

俺には違いが全く分からないので、もっぱら買い物カートを押して坂田の後を着いていく係だ。

調味料の棚を通りかかったので、予備のマヨネーズを買っておこうかと、一つ手にとる。

すると目敏く見付けた坂田に怒られた。

「マヨネーズこないだ3本買ったばっかだろーが!つーかここならセールの時1本188円なんだよ!」

怒られた、のだが。

「…詳しいな」

「…別に、普通だっつーの、こんくらい。覚えとかねえと勿体無えし、」

言ううちに顔を赤くする坂田が、妙に可愛く思えてしまった。
思わず上がる口許を押さえ、横を向いてどうにか誤魔化す。

まあ、こんなやり取りが楽しいし、荷物もあるので、これからもしばらく、俺は坂田の後ろでカート係をするのだろう。


end.

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