01/19の日記
02:10
冬のキス 4
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4.
冬休みの終わり、土方と学校から離れた映画館で待ち合わせをした。
見るのはエイリアンvsヤクザ、というタイトルからしてB級感満載の代物。
まあ、俺は映画はよく分からないから、あいつの見たい物で別にいいのだが。
寝てしまいそうだ、と欠伸をしながら思う。
センター試験まで約2週間。
大丈夫かよ、と、誘われた時に冗談めかして言ったら、一日だけ、それで試験も頑張れる気がするから、と真面目な顔で返してきた。
そんな顔で、可愛い教え子、なおかつ秘密の恋人、というものである奴に言われては、自他共に認める面倒臭がりで寝汚い俺でも、欠伸しつつも待ち合わせ時間前に着くだろう。
きちんと時間の10分前に来た土方は、待ち合わせ場所で煙草を吹かしていた俺を見て、面食らった顔をした。
失礼な、と思うが、こいつが家に来る時など大体そのチャイムで起きるから、まあ仕方がない。
「…早いですね、先生、」
「あー、まあ、たまにはなー。んで、どうするよ?まだ時間あんだろ。飯食うか?」
煙草を携帯灰皿に捩じ込みながら聞く。
「…ああ、はい、そうですね、そこのファミレスでいいですか?」
そう早口で言うと、さっさと歩きだして、こちらを碌に見もしない。
「…ああ、いいけどよ。なに?なんか怒ってんの?今日はちゃんと遅れないで来ただろうが、」
「別に、何でもないです、」
どうも様子がおかしい。…もしかして、
「おい、」
腕を掴んで顔を覗きこめば、その整った顔は耳まで赤くなっている。
「…ちょ、おいおい、何でそんなんなってんの?」
笑うよりも、釣られてこちらまで赤くなりそうだ。
「…あんたが、珍しくまともな格好で、しかも時間より早く来てるとか、なんか…」
そこまで言って、土方は立ち止まってしまった。
「…あー、とりあえずここ邪魔になるから、」
店の脇の路地に引っ張り込む。
そういえば、付き合い始めてから、まともに外で会う事はなかったか。
二人で会う時は俺の家で、土方にがっつかれる事が、まあほとんどで。
「…ったく、何を今更。もっとすげーことしてんだろうが、」
「…そうですけど、」
土方は顔を腕で覆って、動こうとしない
何というか、何だかもう、可愛いな、と思ってしまう。俺も相当だ。
「…しょうがねえな、」
隠れていない赤い耳に、ちょい、とキスをして、
「おら、行くぞ」
と腕を引っ張る。
「…だから、何でそう…!」
「だから、とっとと飯食って、映画見て、うち来りゃいいだろうが、」
に、と笑ってやると、土方は何事か言いかけて、結局ふは、と笑った。
「…抑えきかねえかも」
「んなのいつもだろ」
こんな風に言い合うのは、あと数ヶ月、と俺は決めている。
だから、それまで。
こうしていられる時間を、俺はそうと知られないように、噛み締める。
『もしかして、耳まで赤い?』 3Z
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