小説家になろう 短編群
□運動会 《気遣いと思いやりと片思い》
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―中二 運動会 ―
《プログラム十三番・・・団対抗リレー・・・》
蘭の心臓はばっくんばっくんだった。
それもそのはず。蘭はクラスで二人しか選ばれないリレーの選手だからだ。
そして、もう一人が・・・
「ちょっと、新一!?早く!!」蘭が手招きをする。
「しゃーねーだろ?!さっきまで競技だったのによ・・・」新一は軽く頭をかきむしった。
「頑張って♪トップバッター♪」新一が少し茶化して言った。
「そちらこそ、頑張ってねー。アンカーさん?」蘭もちょっと茶化して言った。
何で蘭がトップバッターなのに、新一がアンカーかって?
次が二年女子団体だからで、予備整列があるからである。
笛の合図で生徒達は運動場に出た。
「位置について・・・ヨーイ・・・」耳栓をした男がピストルをあげる。
緊張感が一気に増す。
「ドン!」
パァン!!
耳を貫くほどの轟音と共にトップバッターがスタートした。
蘭はトップでつきはなそうとしたーーーが
ツン…
「あ・・・」
足が絡まって、蘭は見事に転けた。
後ろから二人、三人と抜かれた。
でも、しっかり走りきりドベでバトンパスをした。
蘭の目からは自然に涙が溢れた。
「・・・・・・」新一は蘭が居る反対側で無言で見ていた。
結局新一の出番まで順位は変わらなかった。
「よし・・・。」新一は一人でポソリと呟いた。
「頼みますっ!」新一は後輩からパスを受けた。
蘭はただただ祈った。
「す、すげぇ・・・」男子生徒の声がした。
「あれ・・・稲妻かよ」
「え・・・」
ふと走っている新一を見た。
いや、走っている新一であろう物を見た。
「嘘・・・」蘭はポソリと呟いた。
いつも手を抜いて、気楽に走っていた新一が・・・・・・本気で走っていた。
新一は、そのまま一位でゴールテープを切った。