小説家になろう 短編群

□partner in life
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あれから一週間。
ニュースは“謎の組織壊滅”で一色に染まっていた。これがまた、政治のトップ付近が絡んでたり、経済界のトップが絡んでたりして、世の中がガラリと変わった。
私の身の周りは二人………の人間が消えたままだった。
“江戸川コナン”
“工藤新一”
の二人だけは。
でも、信じていた。
帰ってきてくれるって……………




「――って何で、この園子様が………」
「はいはい。」
恒例の名文句は軽く受け流して。

「あれ………」
家について、目についたもの。

「電気がついてる………」
「本当だ……どうして?」
園子も私も首を傾げたとき、私の脳裏の中にある仮説が成り立った。

(新一が中に居る………)
そう思う方が先か、私は玄関に手をかけていた。

「ちょっと………蘭!?」
ガチャリ。
開けると目についたのは、靴。
しかも四方八方に散っている。

――――コナン君が履いていた靴。何時もブカブカ見たいで、紐をきつく縛ってた事があったっけ。

私は靴を揃えて、家に上がった。

「新一!!」
一階のあらゆる所をめぐったが、生活感が殆ど無かった。

「あとは………」
二階だけ。
私は意を決して階段を上がった。


バタン


「………新一……!?」
ベットの上で、死んでいるように寝ていたのは、新一。
子供の姿じゃなくて。
知っているようで知らない筈の新一の姿だった。

「生きてた…………っ」
それが嬉しくて。
すごく嬉しくて。
約束を果たしてくれた事が嬉しくて。
目がボロボロ。
嬉しくて、新一に抱きついた。
新一の頬、少し暖かい。
心臓が動いている。
血が流れている。
酸素が巡っている。
呼吸している。
――――生きてる。
それだけでも嬉しかった。

「蘭ー何処よー!」
その間中、園子がずっと駆けずり回っていて、私が新一の上で寝ていたところを目撃されて、冷やかしを受けるのは三日後………。











俺……寝てた……?
………俺の体って………こんなに重かったっけな………
思いっきり貧弱人間みたいなことを思いながら起き上がった先にいたのは――――蘭。

「どう……し……て………?」
俺が解毒剤を飲んで着替えた後、しんどくて寝ちまったときには、蘭は居なかったんだから…………

「………泣いた……のか………」
疲れと寝起きのせいで、声は出にくいし、動きづらい。
でも、蘭の頬に涙の後があるのぐらいは見抜けた。
ごめん。すぐ伝えなくて。寝ちまって。
そのせいで泣かせて。

「蘭………。」
……………そういえば、こいつはすぐに起きないんだった。
包帯男の時もそう。
でも、この体じゃあ、蘭も持ち上がらないだろう。

「………起こすしか無いか。」
起こし方はただひとつ。
博士、灰原。ワリィ。

「起きろぉぉぉぉぉぉぉっ!!」
蝶ネクタイ型変声機、最大音量。
音が漏れないようにと締め切った窓がブルブル震えていた。

「低下している体力を使わせるなよな………」
俺は盛大にため息を付いた。

「ん………」
やっと起きたか……

「蘭。」
「新一………私……」
蘭が軽く目を擦る。

「俺の上で寝てたよ。」
蘭が辺りを見渡した。
何が探してんのか?

「………今何時?」
「午後5時25分。」
ああ。夕御飯の時間か………

「あ、新一も食べに来る?」
「無理だな。今、戻ったショックと、組織を壊滅させた時の疲れが一気に来て……だるくて歩けそうにねーんだ………」
これは本当。
動けたなら、蘭を起こしたりはしなかった。
夜更かししていたのは容易に想像がついたから。

「それじゃあ、まだ寝てて。」
まだ?

「作ってから帰るから。」
…………ここは、お言葉に甘えるか。

「任せるよ。」
もう一眠りでもするか…………
蘭がいなくなってから一言。

「新婚みてーじゃねーか………」
自分で思って照れたのは秘密。


〜数分後〜


「…………新一、どうしたの?」
「……………」
ヤバイ。
顔が異常に火照ってて、顔出せねー……

「一応、野菜炒め作ったから………食べて栄養つけなさいよ!!」
何で此処じゃないんだ?

「復活し次第、学校にも出るからさ………」
「楽しみにしてるから。」
「ああ………」
「言いたいこともあるしな…………あ。」
ヤバイ。
口に出た。
聞いて……ねえよ……な………?

「ん?」
「何でもねえよ。」
聞いてなかった。良かった。

「それじゃあね。」
と、蘭は帰っていった。

「…………動くか…………」
俺は上体を起こして、足を布団から出した。

その後苦労して、一階のリビングまで行って食べた野菜炒めはいつも通り、美味しかった。










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