小説家になろう 短編群

□partner in life
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いつも通りに過ぎる時間。
幸せなひととき。
貴方の声が聞ける時。

私のそんな時間はアイツの一言で打ち消された。


「――――え?今、何て………」
『だから、命を懸けた戦いに行ってくるから………その………何だ…………』
私はアイツが言うであろう言葉に察しがついた。
言って欲しくはないけど。

「…………死ぬかもしれないなんて言いたいの?」
言わないで。“うん”何て言わないで。
『…………死ぬ確率が高い………』
「え………」
待っていた言葉は、想像よりも残酷だった。
死ぬって解った方が幾らか楽だった。

『それぐらいは覚悟の上だけどな…………』
嘘おっしゃい。
声、震えてる。多分、私も。

『二週間ぐらい音沙汰が無かったら、阿笠博士に聞きに行け。』
何時もと違う新一の声。重く、暗く、心に響く。
その分、覚悟が伝わってくる。

――――涙が止まらない。

さっきまではとりとめのない話をして、楽しんでいたのに。嬉しかったのに…………

「どうしてもしなくちゃいけないの?」
『へ?』
馬鹿。

「どうしても新一がしないといけないの?」
馬鹿。

「絶対新一が命を懸けてまでしなくちゃいけないの!?」
馬鹿!
自己中にも程がある。
馬鹿だ。馬鹿だ、私。
私の馬鹿――――

『ああ……やらないと帰れない。それに、これは俺自身の事件だから、自分で始末をつけるまで……帰るつもりは無い。』
………忘れてた。新一が頑固者でカッコツケだったこと。

「……何で、この事件にこんなに力を入れているのかは解らないけれど………帰ってきたら尋問するから………」
『げっ』
新一の嫌そうな声がしたのは気のせいと言うことにして。

「………生きて帰ってきなさいよ………死んだりしたら、許さないんだから………」
『…………解った。俺は………お前のために帰ってくる。』
「………もっと他の言い方、無いの?」
最後まで、キザなんだから。

『………本当はそんなに時間が無いんだ…………もう、切るな。』
「………待ってるからね。」
私が出来る、精一杯の応援。

『ああ。』
ブツッ……











――死なないで。
貴方のあの憎たらしい顔で、私に微笑んで。
貴方の全てを見せて。
私は待ってるしか出来ないから。
ただ、祈るしか出来ないから。
祈ってる。
だから、お願い。
――――帰ってきて、無事に。












カタン。

こんな夜更けに。
誰が来たんだろう。

「蘭。」
思考回路が固まった。

「コ………」
「喋らないで。」
新一と同じ、重く、暗く、心に響く声。そして、覚悟が伝わってくる声。

「これからどんな事になるか解らないから。………ただ、伝えたくて。“俺”の声で。」
「……………」
「一応、今だけの“バイバイ”………な。」
“バイバイ”…………

「また………っ!!」
言葉が溢れた。
止まらない。
足が動く。
制御が聞かない。

「また………会えるよね………?」
私はコナン君――――いや、新一を抱き締めていた。

「………あ………どうなっているか解らないけど、絶対帰って来る。」
「……うん………っ…………」
新一がグイと胸ぐらを押す。

「もう………行かねえと………」
「………行ってらっしゃい。」
私は何時も通り、手を振った。


夜空に月がよく映えた日だった。










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