小説家になろう 短編群

□願いは何時か
2ページ/4ページ

***



「お願いです。彼奴に会わせてください。」
私はここまで非力だっただろうか。
私はそう心で呟きながら祈った。
生きているって信じたい。
でもそれを証明するのはたまにかかって来るだけの電話とメールだけ。
電話なんか怪盗キッド張りに演技の上手い人なら誤魔化せるし、メールなんてただの文。すぐに真似可能だ。
会いたい。
今すぐに。
会いたい。
会って話がしたい。
――――それだけ。

「あ、蘭……こんな所に居たの。」
「園子……」
園子は相変わらず元気に話しかけてくる。私は―――――笑えない。
多分園子も気づいただろう。私の心の内。

「考えてたでしょ。新一君の事。」
「…………………」
やっぱり彼女は気付いていた。

「うん………………」
私は頷く事しか出来なかった。

「新一君も罪な男だねぇ〜……」
「へ?」
私は何が何だか分からなくて首をかしげた。

「女房をほったらかしにして、事件にかまかけて、自分の事は後回し。」
「に、女房?!違う違う!!!!そんなのじゃ無いって!!!!」
「おやぁ〜?奥さん、お顔が真っ赤っかですよ〜〜?」
「/////」
園子のバカ…………

でも…………ありがと。

ちょっと、勇気出た。

「急がないと掃除始まらない?」
「げっ!マジで?!もうそんな時間?!」
園子が時計を見ながら呟いた。

「急ごう!」
私たちは走り出した。
ここに来る前から私の心は軽くなった気がした。











次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ