小説家になろう 短編群

□今宵、最後の我が儘
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機械的な電子音が部屋一杯に流れる。

「!!!!!!」
私の心は跳ね上がる。
心が踊る。
胸が弾む。
体が軽くなったみたい……………って違うか。
私は携帯を取って開ける。

ディスプレイには

“工藤新一”

嬉しさは有頂天に達した。
飛び上がったりはしないが。

「も…もしもし……」
『ったく…………何回コールさせたら気が済むんだよ………』
間違いない。
本当の本当に
新一だ。

「新一…一体何処ほっつき歩いてんのよ!」
ごめん。
可愛くないこと言いました。
口が反対に動いちゃう。

『ワリィワリィ………まだ事件が終わってなくて………元気だったか?』
自分の事をもっと話してくれても良いのに。
今の貴方を知りたいのに。
私の事より。

「元気だよ。勿論……」
表だけの返事。
“教えて”
あなたのリアルが知りたい。

『蘭。』
新一の真剣な声。
引き込まれる。

「何?」
『………知りたいんだろ?………俺が……今、何処で、何をしているか………声に出てるぜ……』
「何でもないわよ!そんなの望んでない!!知りたくないわよ!!」
嘘。
是が非でも知りたい。
でも、迷惑がかかる。
だから聞かない。
聞かせてもらうまで。

『…………なら良いけどよ…………』
あ。
良いんだ。
そんな程度なんだ。

『んじゃあな。』
え……………もう?
もう終わり?
嫌だ、
嫌だ、
嫌だ。

「嫌っ!!」
声になってしまった。
迷惑だって解ってる。
でも、今日最後の我儘。
―――――――許して?

「たくさん話して………目一杯話して………私が新一の事思い出して泣かないように………ね?」
『フッ………』
「な、何よ?その意味深の笑いは?!」
そこ、笑うところ?

『蘭。お前、強くなったよ。離れる前よりずっと。』
「何よそれ。親みたいね………」
私の発言に私も、新一も笑いだした。

「新一、精神年齢が年食ったんじゃない?」
『うっせぇ。』


この時が終わってしまっても、頑張ろうと思った。










何て現金なんだろう。
電話が切れた後、一人で笑った。

もう、寂しくなかった。

明日は晴れる。
そうも思った。








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