幸せのまえに・・・
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「すみません、奢ってもらっちゃって」
「いえ、此方こそ先程はありがとうございました」
あの後、些細だがお礼にとジャーファルが買ったジュースを何処か気まずそうに受けとる彼女に気にしないでくれと笑う。
「正直助かったんですよ。一人じゃちょっと骨が折れますから」
「何気に沢山ありましたからね。でも驚きました。いきなりふらついて倒れるんですもん」
その言葉に見られてたかと今度は僅かにジャーファルが気まずそうに頬をかいた。自分のその仕草に彼女は微かに笑う。
それがどうしてか恥ずかしくて、ジャーファルは自分用にと買った珈琲の缶に口をつけた。
「あ、怪我してますよ」
「?」
彼女が指し示すのはジャーファルの手。どれ、と己の掌を見れば確かに擦り傷が出来ていた。
「あぁ、本当ですね」
「ちょっと待っててください。…………えっと、」
「大丈夫ですよ。このくらい……」
「ダメです、ちゃんと消毒しなきゃ!」
軽く鬼気迫る彼女に、はい、と頷くしかなかった。どうして初対面の少女に怒られているのだろうかと思ったが、止めた。
今回は自分が悪い。
それをわかったからこそ、ジャーファルは大人しく彼女に掌を見せた。