magi 短編
□イタズラ王子様
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「じゃーふぁるーー!!」
呼ばれた声に振り向く前に、ドンッと音がつきそうな程勢いよく後ろから抱きつかれ、ジャーファルは持っていた書物を落とさない様にするのが精一杯だった。
書物を抱え直して振り向けば、抱きついているのは先日引き取った幼い子供。
「どうしたんですか、アリババくん?」
優しく問いかければ、官服を掴んだままアリババと呼ばれた子供は嬉しそうにジャーファルを見上げた。
「あのね、あのねっ、シンがわなにひっかかったんだよ!!!」
そのまま告げられた言葉にジャーファルは固まる。
アリババの言葉を理解できなかった訳ではない。アリババの台詞の中に居てはいけない人物の名前を聞いたからだ。
だが、可笑しい。シンことシンドリア国王であるシンドバッドは只今政務中であるから、彼は政務室にいるはずである。
まさかとは思うが…。
「アリババくん………罠に引っ掛かったのはシャルルカンなんじゃ……」
「うぅん。ししょーはちがうよ!だってシンのへやにしかけたわなだもん!!」
あぁ、それは間違いなくシンドバッドだと確信した瞬間、ジャーファルは沸々と怒りが沸くのを感じた。
国王にイタズラを仕掛けたアリババにではない。仕事が差し迫っている今、何故か自室にいるシンドバッドにだ。
そもそもジャーファルはアリババのことを滅多に怒りはしないのだが…。
「あの野郎……。またサボりやがったな」
先程の声とは違い、低くなった彼の声にアリババはこてんっと首を傾げた。
「……じゃーふぁる?」
「アリババくん、もう一度シンにイタズラしたくありませんか?」
優しく頭を撫でながら笑顔で言ったジャーファルの言葉に、勿論幼いアリババは意味などわかる筈がない。
持ち掛けられた誘いにアリババは思いっきり頷いた。
→おまけ