企画
□悠里様
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例えば、自分以外に見せる笑顔だとか。
例えば、自分以外を呼ぶ声だとか。
そんな光景を見る度に、
彼の笑顔は自分のモノなのに、
彼の声は自分のモノであるはずなのに
そう叫ぶ、心に積もる蟠りに、そっと目を伏せた。
「ーーーそれで、その時師匠が……」
嬉しそうに今日の修行の成果を話すアリババにバレないよう、ジャーファルは一つ溜息をついた。
別にアリババの話がつまらないとかでは無いが、先ほどから話の話題は修行のことばかり。それはまだ良いとして、あちらこちらに何故かシャルルカンが出てくるものだから全く以て気に入らない。
彼の目の前に居るのは自分なのに、彼にそんな顔をさせているのは自分じゃないから、尚更。
(私のアリババ君なのに……)
気に入らない。
アリババから尊敬の念を受けるシャルルカンも、自分以外の人物に目を向けるアリババも。
些細な事でこんなに嫉妬する自分自身も。
「……気に入らないなぁ」
「?、ジャーファルさん?」
呟きを聞き取る事が出来なかったのか首を傾げるアリババを、返事をする代わりに、ジャーファルはぎゅっと抱きしめた。