magi 短編

□彼以外に"神"がいるならば私は"神"を殺すだろう
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神様って居ると思いますか?



そう呟いた赤髪の少女に白龍は疑問符を頭に浮かべた。

目の前にいる少女、モルジアナはそんな白龍を見ることなく、ふと空を仰ぐ。



「モルジアナ殿、それはどういう…」

「…いえ、ただ白龍さんは神様を信じていらっしゃるのかと思っただけです」

「………小さい頃は信じていましたよ」


何もかも、信じて疑わなかった頃は


そう続きそうな言葉を飲み込んで白龍はモルジアナを見つめた。

彼女は空を仰ぐ事を止めて此方を見ているが、その瞳には何の感情も見ることが出来ない。

それが何故か少し悲しくなって白龍はモルジアナから僅かに目をそらした。



「モルジアナ殿は………神を、信じているのですか?」



そう投げ掛けたとき、白龍はモルジアナの瞳に映す感情が変わった事に気付いた。

此方を見る彼女の瞳は今度こそ確かに白龍を見ていた。



「神様がいるとは思ってません。でも、私にとっての神様なら居ます」

「……………」

「私が"私"でなかった頃、初めて"私"を創ってくれた人。初めて手を差し伸べてくれた、とてもあたたかくて、私を"私"と認めてくれた……、神様なら」



ふと白龍の脳裏に一人の、彼の顔が浮かんだ。

その顔が浮かべるのは眩しすぎる笑みばかりで、彼である証拠など無いのに、彼で間違いないと白龍は確信した。



「それは……アリババ殿ですか」



疑問符を付けずに発した言葉にモルジアナは、ただ微笑んだ。


それが、答えだった。



「私はアリババさんの為なら何処へだって行けるんです。例えそこが火の海でも、砂漠の真ん中でも、あの人が私の名前を呼んでくれる限り何処へだって」

「何もそこまで…」

「…しなくて良いとあの人は言うでしょうね」



白龍の言葉に続けるようにモルジアナは言葉を放った。

僅かに低くなった彼女の声色に白龍の脳内で警鐘が鳴り響く。

聞いてはいけないと、知ってはいけないと鳴り続けるソレに白龍は一つ頭をふった。



「確かにアリババ殿は素晴らしい方だと思います。しかし、貴女が命を懸けてもあの方はそれを、」



白龍はそこで言葉を切った。
いや、切らざるをえなかった。

目の前に立つモルジアナの瞳には今まで見たことない感情が映っていたのだから。



「知っていますよ、そんなこと。アリババさんが自分のせいで他人が傷付く事を嫌っていることも、知っています。だけど、あの人は優しすぎるから。自分が背負わなくて良いものさえも独りで背負い込むんです。それで自分が傷付いても、知らない顔をして……、笑って……。だから、私はせめてあの人が転ばないようにあの人を支えてあげたい、私のこの存在全てをかけてあの人の翼になりたいんです」



そう言った彼女の瞳に映る感情の色をみて白龍は一瞬息をするのを忘れた。

何時もの無表情に似た表情を浮かべるモルジアナの、赤い瞳に映るのは彼女の"神様"に対する大きな忠誠と小さな、けれどとてつもない程の狂気だけだった。



「あの人は私の存在理由ですから。ですから、あの人の前を塞ぐものは私が消します」



何とも誇らしそうに、瞳に狂気を宿したままファナリスの少女は言うのだ。

それが例え彼が望むことではなくても、彼女の"神様"のためにと声高に叫びながら。



「だって私はあの人の翼ですから」



唯一人の"神様"のために







(泣かないで、鳴かないで、哭かないで)
(私が守るから)
(だから、どうか笑って)
(唯一人の私の"神様")




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モルジアナの口調が軽く行方不明

要は、皆が言う神様よりもアリババ君の方が"神様"みたいじゃない?って話を書きたかったんだけど。
そう言えばマギの世界に神様っていたっけ?って事に今更気付いた。←



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