magi 短編

□かごの外で鳴いた
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「コレ、何だろ…?」


天気のいい昼下がり。

書庫整理の手伝いをしていた最中に見つけた少し小さめの丸い何か。
針金で作られた球状の柵に、中心には一本小振りの横木がある。

鳥かご?と断定出来ぬままアリババは首を傾げた。


「アリババくん、どうし…………あぁ、それですか」

「ジャーファルさん、コレって………」


横からひょっこりと顔を見せたジャーファルに腕の中にある物を示せば、彼は懐かしそうに柵を指で撫でた。


「昔、怪我していた小鳥を助けた時に使った鳥かごですよ」

「小鳥?」

「ええ。とても綺麗な羽の色をしていてね」


丁度このくらい、と手を使って大きさを示す。
ほぅと息を吐いてアリババは彼の手を見つめた。


「怪我が治ってしばらくいたんですけどね、結局かごから逃げちゃって」


鳥かごの中から外をジッと見つめていた事は知っていた。
けれど、何故か惜しいと思ってそのままにしていたのだが、やはり空へと戻りたかったのか。

目を離した隙に、かごの扉は開いていた。


「……嫌っていたんでしょうね、私のことを」


自由を奪った自分のことを。

証拠にあの小鳥はかごの中で一度も鳴きはしなかった。


「……違うと思いますよ」

「え?」

「多分その鳥はジャーファルさんのこと、好きだったと思います」


そう言ったアリババの瞳は真っ直ぐ自分を見ていた。


「だって、ホラ!」


急に窓を開け、差し込む光にジャーファルは一度目を窄めた。

次に目を開いたときに見えたのは、日の光を受けてキラキラと輝くアリババの金髪。

そう言えば、あの小鳥の羽も似たような色だった。




「ジャーファルさん」


呼ばれた声にハッとして彼の方を見れば外を指差しながら笑っている。
何事かと窓辺に寄ったジャーファルの目の前で、黄色い小鳥が羽ばたいた。


「……………え?」

「きっとジャーファルさんのことが気になってたんですよ」


鳥が飛び立った方向を見続けたまま、アリババは呟いた。


「………アリババくん」

「はい、」

「キスしても良いですか?」


突然のその言葉に頬を赤めながらも頷く彼を、ジャーファルは思わず抱き締めた。


互いの唇が近づいて、合わさったそのとき、


外で小鳥が鳴いたような気がした。





end






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