magi 短編
□はじめまして
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「…………」
ぱたん、と静かに、しかし出来るだけ早く、アリババはたった今開けたドアを閉めた。
目の錯覚だろうか。今部屋に知らない人がいたような…。
それも、こそこそせずに堂々と部屋の真ん中に座っていた……気がする。
多分強盗や空き巣の類いでは無いだろう。それはそれで問題だが、例えそうであっても盗られるものは何もない。
だとすれば考えられるのはたった一つ。
あぁ、俺も遂に目が悪くなったのか。うん、きっとそうに違いない。
何処か遠くを見ながらアリババは、「さっきのは錯覚、さっきのは錯覚」と自分自身に言い聞かせた。
次にドアを開ければ何て事は無い、いつもの自分の部屋が見えるはずだ。
よし!と一つ意気込んでからアリババはドアノブを掴み、一気に回した。
「まったく……、いきなり閉めるなんて酷いじゃないですか」
僅かに眉を寄せた、相も変わらず部屋に座っている男に、どうやら錯覚では無かったようだと、つい他人事の様に思ってしまった。
あぁもうっ!一体どうなっているんだ!!
心の中でそう喚きながらも、アリババは視界が暗くなるのを感じ、そしてそのまま意識を手放した。