magi 短編
□明け方近くに
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「ところでジャーファルさん。何時からあそこに居たんですか?」
寝台の中。気だるい体で寝返りをうちながら、アリババは隣で横になっているジャーファルに尋ねた。
結局あのままアリババはジャーファルに彼の部屋へと連れてこられ、朝が近いと言うのに行為に及んでしまったのだ。
記憶に新しいそれに気恥ずかしさを感じながら、ふと思った疑問を尋ねれば、ジャーファルはふふっと笑ってアリババの髪に手を伸ばした。
「ねぇ、アリババくん」
「?」
「あんな窓辺で歌っていたら危ないですよ?」
「っ!!?だっ………だから何時から居たんですか!!」
途端に顔を赤く染めたアリババにジャーファルはただ笑うだけ。
意地が悪いとムッと口を尖らせた。
そんなアリババを宥めるようにジャーファルは彼の頭を撫でる。
「そう言うアリババくんだってどうしてあそこに居たんですか?」
話を逸らすなとアリババの目は語っているが、言うつもりなどジャーファルは更々無いのだ。
それに気付いたアリババは、ならば此方も答えてたまるかと軽くそっぽを向いた。
「あ、そうだ。アリババくん、さっきの歌、歌ってください」
「えっ、えぇ!俺の質問は!!?」
「良いじゃないですか。歌ってくださいよ」
嫌だと抵抗を始めれば、グイッとアリババを自分の腕の中に収めたジャーファルに、最後の抵抗も無駄に終わる。しばらくムッとしていたアリババだが、観念したとばかりに一つ溜め息をついた。
「………下手でも文句は聞きませんから」
そう言って小さな声で先程の旋律を紡ぎ始めたアリババの声を聞きながら、あぁこの歌は子守唄かと段々薄れていく意識の中でジャーファルは思っていた。
夜が明ける、まだほんの少し前のこと。
end