magi 短編
□紙飛行機に綴る
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昔、とある本に書いてあった事だけど。
紙飛行機に書いた手紙を飛ばして、一日中飛んでいたら手紙の相手に気持ちが伝わる、なんて今となっては嘘にしか聞こえないソレを自分は今まさに実行しようとしている。馬鹿なことだと解ってはいるが、こうでもしないと正直やってられない。
鮮やかな青空に飛ばす紙飛行機に綴ったのは、たったの二文字。文章とかじゃなくて、二文字の言葉。
こんなのに書かずとも口に出せればそれが良いのだろうけど、きっと口で言ったって相手には聞こえない。ルフが見えるあの友人と違って自分にはそんなこと出来ないのだから。
もう一度、紙飛行機に視線を落とした。
綺麗にとはいかないけれどある程度は丁寧に折られているソレは今か今かと空に飛び立つのを待っているようだ。そんな自分の考えにフッと自嘲的な笑みを溢す。
あぁ彼が言っていた通り、自分は本当に馬鹿だ。伝えられる機会など、何回も有った筈なのに。それを全部無駄にして、結局こうしないと気持ちが伝えられない。
この紙飛行機だって飛び続けるわけではきっと無いのに。
こんな自分を見たら、彼は何て言うだろう。多分怒るだろうけど、少しは手加減して欲しいと思う。彼の怒る様子が目に見えて少しだけ笑った。
その時、丁度風が頬を撫でた。さてと、そろそろこの紙飛行機を飛ばしてみようか。0に近い、それも確かではない子供騙しのおまじないを信じて。
指先から放たれた紙飛行機は真っ直ぐ風に乗って飛んでいく。もしや…と思ったが、しかしアレはもうすぐ落ちるだろう。頬を撫でた風はもう止んでいるから。
少しして、ポトリと落ちた紙飛行機にやっぱりと苦笑いを溢した。回収しようと思ったが止めておこう。どうしてか解らないけれど、そんな気がするのだ。
ぐるりと方向転換して、元来た道を歩み始めた。そろそろ戻らないと、友人たちだけでなくお世話になっている彼らにも心配をかけてしまう。
一度振り返ってみたが、やはり紙飛行機は落ちたまま。
当たり前かと、もう振り返ることなく帰り道を辿る。
勿論、落ちた紙飛行機の傍に白い鳥がいたなんて、見えない自分には知らないことだった。
end
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書いた私が言うのも何ですけど、カシアリって言えるのかな、コレ………。