その他×ルフィ

□Thick morning*
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―――――――――ドォンッ!!



朝から騒々しい爆発音と共に鳥達が一斉に旅立つ音が聞こえる。


ルスカイナに来て半年。
一体この火山の噴火を聞いたのは何回目か。

憂鬱な思いを胸にレイリーは其の長い白髪を結う。


そしてこの島に特殊な樹が生えた唯一安全な場所に向かう。




彼処で毎日、自分の弟子は寝ている。




安全な理由はその樹。
動物が嫌がる成分を分泌しているらしい。
此れと同系で毒を出す物も有るらしいが、あの樹には毒はない。
しかし、それでも動物が嫌がるということは人間という動物にも多少の害が有っても可笑しくない。

毎回この様に説明するのだが、あの少年は絶対に離れようとはしなかった。





其の弟子の事を思い出し、レイリーは微かに顔を綻ばせる。

新しく出来た可愛いい弟子。
彼が其処で寝る理由はただ一つ。
彼の、麦わら帽子だ。

近くに無いと安心して寝れないとか。
いつもは大雑把なくせしてこういう所は実に謙虚で繊細。

本当、可愛らしい。




「ルフィ君、起きてるか?」

目的地に着き、レイリーは辺りを見渡す。
しかし其処にルフィはおらず、寝た際に使ったらしいタオルケットのみが地面に乱雑に放置されていた。



「あそこか・・・」


レイリーは樹の向こう側を見据える。


―――――見聞色の覇気。
相手の気配をより強く感じるこの力。
相手が視界に入らずとも位置や数、更に相手が何をしようとするかまでわかる。



とにかくルフィは向こう側に居る。
レイリーは樹に沿って其方へ歩き出す。


数歩進むとそこにルフィの姿はあった。
座って背中を丸めて前屈みで何かしている。

何をしているのか、不思議に思いつつレイリーはルフィに呼び掛ける。


「ルフィ君、何をしてるんだ?」
「!!??レ、レレ、レイリー!?」

名前を呼ばれ、ルフィは激しく動揺する。
其れはもう飛び上がりそうな程に。


「どうしたんだね?そんな慌てて」
「い、いや!!その、何でもねェ!!ホントに!!」
「・・・・・・・・・・・・」



彼と半年過ごして分かったことがあった。
彼は実に嘘が下手。
まあ、見た所確かに単純そうではあるが。


「こんな朝早くにどうした?怪我でもしたのか?」
「してねェ!!大丈夫だから!!」

此処までバッサリ拒絶されてしまうと逆に気になる。
一体何が有ったのか?

近寄ってみようと足を踏み出すと、其の足音にルフィは敏感に反応する。

「わっ、わっ!!レイリー!!コッチ来んな!!」


狼狽しきった様子で此方に顔を向けるルフィ。
どうやら体は動かせないらしい。


本当に怪我でもしたのではないか。


そう思うと急速に心配に駆られる。

「何をしているんだ?言ってくれないと心配するだろう」
「い、言えねェ!!ホント、大丈夫だから!!」


ああ、もうダメだ。
不安しか募らず、レイリーは進む事を決意する。

ルフィに歩み寄り、その薄い肩を掴む。

「ルフィ君、キミは・・・・・・」
「ぁあ///!!!」

背中越しに覗いたルフィの行動。






その行動にレイリーは言葉を失う。






同時にルフィも顔を真赤に染め、恥ずかしそうにレイリーから目を逸らす。









そう、そのルフィの行動。


毎朝男性にのみ起こる生理的現象。
・・・・実際は女性にも起きているらしいのだが。




ともかく、ルフィが行っていたのはその生理的現象の処理。
マスターベーションとでも言っておこうか。



要するにルフィは自慰行為をしていたのだった。





「・・・・・・・」





あまりの事にレイリーは言葉が無い。


悪い事をしてしまったという罪悪感と、
よくわからない複雑な感情。


「すまない」


既に事遅しかと思うが一応謝罪の言葉を述べる。
そしてルフィから数歩離れてその場所に腰を下ろす。


ルフィはぎこちなく再びレイリーに背を向け、行為を再開する。





双方に気まずい沈黙が流れる。













「おれ、・・・これ好きじゃねェんだよな」


其の沈黙を先に破ったのはルフィだった。
未だレイリーに背を向けた侭。


「くすぐってェ・・・ん、だけだし、上手くできねェし」


愚痴に近い形でポツポツと言葉を零す。


レイリーは何も言わず、其れを聞いている。






ふと疑問に思った。
この生理的現象はほぼ毎日起きる筈。
しかし、こんなルフィを見たのは今日が初めて。
しかも処理にかなり困っているらしい。


一体今迄はどうしていたのだろうか?

思い切って尋ねてみた。


「なあ、ルフィ君」
「ん?」
「其れが起きるのは毎日だろう?何故、今日だけこんな・・・・?」
「ああ、それは」


ルフィは少し顔を曇らせる。

「・・・・いつもは放っときゃ治るんだけど、偶に有るんだよチョー痛ェとき」
「・・・・・」
「こーゆー時はいつもならゾロとかサンジが何とかしてくれんだけど、今居ねェし」
「は?」


今、この少年一体何て言った?
いつもなら?ゾロとかサンジが何とかしてくれる?




とんでもない事を聞いてしまったようだ。
あの麦わらの一味の双璧。
戦闘面でのサポートだけでなく、まさかのソッチ方面でもバッチリ支えていたとは。

「できる事ならやりたくねェけど・・・此の侭だとシッコするとき痛ェし」


はあ、そんな溜息が漏れそうな程に酷く疲れた様子なルフィ。


「なあ、レイリー。コレって何で起きるんだ?」
「ああ、それは睡眠時の血圧の変化によるものだよ」
「・・・・・・ん、そ、そっか」


絶対にわかってない。
返答しつつ、レイリーは思う。




しかし、まさかこんな事になるとは思いもしなかった。
様々な感情が駆け巡り、目の前に座る少年が更に愛おしく見えてくる。


この年になってこんな事に思うとは。






「あ、あのさレイリー」


突如恥ずかしそうにルフィはレイリーの方を向く。
頬を赤く染め、顔を傾けて此方を見る姿はなんとも艶が有る。


「ちょっとアッチ行っててくれ///レ、レイリーが其処にいちゃ、その、上手くできねェ////」
「!!!」



・・・・・・・ったく、この少年は。





ルフィの言葉にレイリーはゆっくりと立ち上がった。
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