ゾロ×ルフィ

□羊でニャンコな船長より*
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只今、暦は11月。


だというのに今、サニー号が渡る海の季節は早春。


肌寒さの中にほんのり暖かさが顔を出す。


とは言ってもここは海の上、風がよく吹く此処では冬に同じ。


おまけにまだ日も登らない早朝。

故に海もかなり冷たい。




のに、



バカが一人居た。


サニー号の船首に


こんな朝っぱらから海で泳ごうとする男が。


「バカじゃねェ。立派な寒中水泳だ」



すいません。寒中水泳だそうです。



緑の短い髪を更に手で後ろに流し、上のTシャツを脱ぐ。

そして大きく息を吸い、





飛び込――――――



「ゾロォオオオオオ!!!!」
「!!???」


――――む寸前。ホント、寸前。


というよりも飛び込んでいた。


しかし、その宙に浮いた体を叫び声と共に体に巻き付いてきた何かに引き戻された。




まあ、誰がどうやったかなんて嫌でも想像つくが。


「何すんだ、ルフィ!!」
「それはこっちのセリフだ!何してんだよ!」

当然我らが船長、ルフィ。
体に巻き付いてきたのは彼の腕。
その腕を使い、ルフィはゾロの背中にぴったりとくっつく。
ルフィの着ているセーターが肌に擦れる。

「また寒中水泳とか言わねェよな?」
「寒中水泳」
「言うなっつったろ!!」
「知るか。事実だ、しかたねェ」

ゾロの返答にルフィはぷうっと頬を膨らませる。
暫し黙ると何を思いついたのか、ゾロに回す手に更に力を込める。

「ルフィ?」
「ゾロ、今日は何の日か知ってるか?」
「知らねェ。てか、この海来てから日付なんて気にしてねェよ」
「ったく、もー・・・・」

小さく息を吐き、ゾロの首元にキスをする。

「今日はゾロの誕生日だぞ!おめでとう、ゾロ!」
「・・・・そうか。忘れてたな」
「おれの誕生日は覚えてたのに」
「それは当たり前だろ。なんか分かる」


愛する人の誕生日なら。


「とにかくだ!だからおれ、今日はゾロから離れねェ!」

ぎゅっとゾロに抱きつき、楽しそうに笑うルフィ。

「別に寒中水泳しても良いけど、おれも一緒だからな」
「お前泳げねェだろ」
「おう、泳げねェ。だから寒中水泳なんてしねェほうがいいぞ」
「・・・・・・・」
「まあ、でも・・・・・・」

ルフィは悪戯っ子の様な笑みでゾロを見上げる。

「ゾロが離れてほしいって言うなら離れるぞ?」
「・・・・・・ったく」



言うわけねェだろ、んな事。


どうやら今回は船長の勝ちみたいだ。
もうお手上げ。

「それに溺れたってどうせゾロが助けてくれるだろ?」
「・・・・まあな」
「にしししし!!」

船の手摺から降り、ゾロはルフィを背負った侭船内に向う。

まだ日も昇り切っていない明方。
よって他の船員はまだ起床しておらず、今甲板にいるのは二人しかいない。


ゾロの足音がこの静かな朝に響く。


ルフィが背中越しに此方を覗き込む。

「なあ、ゾロ」
「ん?」
「ごめんな」
「は?」

突如謝罪を述べたルフィにゾロは目を丸くする。

「何だ、急に」
「んー・・・。おれさ、ゾロにプレゼントあげようと思ってな。ナミに金くれって言ったらよ」

その事を思い出し、ルフィは眉を顰める。
そして唇を尖らせる。



そう、あれは一週間前。


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「何でくれねェんだよ!おれは船長だぞ!」
「いやよ!」

ルフィはキッチンでスイーツを食べていたナミに頼んでいたのだが、

「何でだ!?」
「それはこっちが言いたいわ!何でゾロのプレゼントなんかの為にあげなきゃいけないのよ!」
「そうだぞ、ルフィ。あのクソ剣士の為なんかに“お前が”態々あげる事ねェ!」
「いいじゃねェか!おれだってゾロに何かしてやりてェ!」
「もう毎日してあげてるでしょ!充分よ!」


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「ってわけで、くれなかったんだよ」


しょげるルフィにゾロは呆れた笑みを浮かべる。
ルフィに対してではなく、ナミとサンジに対して。
哀れ、ルフィに恋敗れた二人。
ルフィの話を聞く限り、相当悔しがってる。

だからと言ってルフィを渡すつもりは毛頭ないが。


だが、ルフィの話は終わらなかった。


「でな!其の後、ロビンに教えてもらったんだけどな!」
「・・・・あの暗黒女に・・・か」


嫌な予感しかしねェな。

思い浮かぶはあの妖艶な笑み。
一体何を彼女はルフィに言ったのか。

「んでな!金のかからねェプレゼント!」


まずい。
マジで嫌な予感しかしねェよ。

いや、これもこれでうめェと言うか・・・・。


誕生日サプライズと言うベタな展開、どう転がるか。



「おい、ゾロ!聞いてんのか!?」
「お、おう」
「でな!だから、今日一日おれは・・・・」
「・・・・・」



「ゾロの羊になる!!」




「・・・・・・・・・・・・は?」





さて、一体どうしたのか。


羊って、何だ?



あのモコモコか?



そんなプレイ有ったか?



「え、お前、今何つった?」
「聞いてなかったんか?だから、羊になるって!!」



・・・・・・ホントに羊らしい。



羊になるって、どーいう事だ?


モコモコ着るのか?
それもそれで可愛いけどな。


「な、なあ、ルフィ。羊になるって何だ?」
「おれもよくわからねェ!でもロビンがそう言えって!」



ルフィの言葉にゾロはもう声も出ない。


あの女、一体どういうつもりだ?


モコモコフェチかよ!



「残念ながら、モコモコフェチではないわ。好きだけど」
「!!??」

突如上方から声が聞こえ、ゾロは慌てて上を見上げる。

マストの上にロビンが本片手に座っていた。

「テメェ、何で・・・・!
「あら、見透かされちゃったわね。でもまあ、いいでしょ?」


軽い身のこなしでロビンは甲板に降りてくる。
甲板の芝生に降り立つと、其の侭二人の方へ歩み寄る。

「私はルフィに羊になれなんて言ってないわ、一言も」
「え?でも、ロビン・・・」
「私がなれって言ったのは羊にじゃなくて執事よ。召使って言った方が良かったかしら?」



これで漸く謎が解けた。

ロビンの言葉に何て事頼むんだ!とゾロは少々呆れる。



が、当のルフィは

「飯使い?おれ、料理は出来ねェよ」
「・・・・・・」

一体どうしたらそんな間違いができるのか。
ロビンは言葉も出ない。


「・・・・・・相変わらずね、ルフィは。じゃあ、こういうのは?」
「んん?羊じゃだめか?」
「羊・・・・・まあ何でもいいのだけど」



ロビンは屈んでルフィと目線を合わせる。
二人の顔の近さにゾロは少し苛立ちを覚えるが、とりあえず今は置いておく。


ルフィの頬をそっと手で触れ、ロビンはにっこりと笑った。


「ゾロの・・・・ペットっていうのはどう?」
「ペット?」
「ッ!!??」


またすごいものを出してきた。
だがやっぱりルフィは特に何も思わないらしい。

「ペットか・・・。ペットって言やぁ犬とか猫とかワニとか?」
「ね、猫にしましょう。一番似合うわ」

何故か出てきたワニという言葉に慌ててロビンは設定する。
しかしルフィもルフィで猫は結構気に入ったらしい。

「よっしゃ!おれ、ネコな!!ゾロのネコ!!」

自分で頭に手を当てて、ネコ耳を作る。
何とも微笑ましい。

「おい、ルフィ!!」
「ん?何だ、ゾロ?」

突如名前を呼ばれてルフィは振り返る。
其処には少し困った顔のゾロが。

「どうした?ゾロ」
「お、お前・・・・」

渋り気味のゾロにルフィは

「ネコじゃ、嫌か?それともおれじゃダメか?」

悲しそうにゾロを見上げる。

「っ/////!?」



其の顔、マジ反則だろ!!


「お、おう。べ、別に・・・・」
「そっか!んじゃネコで良いな?」

蔓延の笑みで笑うルフィにゾロも釣られて笑う。
そしてルフィを抱きしめようと腕を伸ばす。
が、

「!?」

突如ルフィの肩から生えた綺麗な女の手に阻まれる。
勿論ロビンの手。
しかし当の本人は何時の間にか先程の場所から居なくなっていた。



突如再び上方から

今度は何か物体がルフィを目掛けて真っしぐらに飛んでくる。


思わずゾロは駆け出すが、



其の前にルフィから生えた手がそれを受け取る。

其れを受け取った手はルフィの頭、首の方に這う。



そして何かを取り付けた。


「おお!!」
「・・・・・・は?」

出来上がった物にルフィは目を輝かせ、ゾロは呆れる。

「その方が猫っぽいでしょ?」

突如2階に姿を現せたロビンは楽しそうに笑う。


その出来上がった物とは・・・・・・・


「おう!!猫っぽいぞ!!」


黒いふさふさのネコ耳+大きな鈴付の黒い首輪。


ルフィの髪の黒さと合わさってホントに耳が生えているようで。



「ロビン!!尻尾はねェのか!?尻尾!!」
「ごめんなさい。さすがに尻尾はないわ」
「耳と首輪があるだけで十分だと思うがな」

手に入れたネコ耳に燥ぐルフィにロビンは静かにほほ笑む。
そして其の儘船室のキッチンへ向かっていった。
そんなロビンをゾロは残念すぎる眼差しでしか見ることができない。


「あんなもの・・・・明らかにルフィ用じゃねェか。アイツ、ルフィに一体何を・・・・・」
「ゾロォオオオオオ!!!!」

立ち尽くすゾロにルフィは猫っぽく驚異のジャンプ力で飛びつく。
そのままぎゅっと首に手を回し、抱き着く。
ゾロに頬を摺り寄せている様は本当に猫のようで今にもゴロゴロと喉が鳴りそうだ。

「にゃ〜!!ゾロ〜!!好きだー!!」
「・・・ったくお前は」

そんなルフィにゾロも思わず頬が緩む。
そしてルフィの頭を軽く撫でる。

「にししし///!ゾロ、腹減っ・・・・・・腹へったニャ!!」
「ニャ?」
「おう、ネコだからな!ニャって言わなきゃダメだろ?」
「・・・・・・・ま、いいけどな。そろそろクソコックも起きてるだろ」
「ニャ!よっしゃ!!飯だァ!!」
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