HxH Short

□嫉妬
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どくん、どくんと鼓動の音。
1mmたりとも動けない緊張感。

そして、私の知らない場所で鳴る静かな足音。


「(移動したほうがいいかな…)」


気配は既に空気と同じくらいに保っている。
このまま移動すれば気づかれない可能性は高いが、相手も同レベルの能力者。

下手に動けば不自然に思われるだろう。


「(やっぱり、このままか。)」


コツン。

ふいに足音が止んだ。
同時に、背中に違和感が走る。


「みーつっけた」


優しげで恐ろしい悪魔の声が耳元で聞こえた。

彼の手が、私の身体へと伸びてくる。


「いやああああああっ!!!」

「っうわ」


彼の掌を私の掌でパシンと平手打ちし、直ちに後方転回で後ずさりした。


「名無しさんってば可愛いんだから。」

「…はあっ……はぁ」

「ただのかくれんぼだったのに。」

「シャル、近寄らないで…」


にこにこと歩み寄って来る彼を睨んでみた。
しかし、帰ってくるのは微笑みだけ。
威嚇については私に勝ち目はないようだ。

ここ数時間、なぜか彼は殺気立っている。


「(殺せないのは分かってるハズなのに)」


旅団同士で殺し合いだなんて。
そんなの、掟を破る事になるでしょう?


「名無しさん。どうしてあいつ等と仲良くしてるの?」

「………何で知って…」

「ただのガキだよ。本当は殺せるんでしょ。」


シャルが言っているのは、私が幻影旅団の名を伏せて接している新米ハンター2人のこと。

彼らには邪心が無く、純粋だ。
だからこそ、私は彼等の友人として接している。


「名無しさんに近づく奴は、許せない。だから、君は俺のものになればいい。」

「馬鹿じゃないの…」

「名無しさん、」


とうとう彼と私の距離は数センチ。
逃げ出そうと思えば逃げ出せるだろうけど、彼は私の仲間だからそれはやりたくない。

シャルの手が私をそっと包み込む。


「何処にも行かないで」


その言葉に、私は何も返せないでいた。





( 嫉 妬 )







( 保証はできないけれど、 )


        ( 今だけは誓ってあげる。 )


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