V i o l e t !
□05
2ページ/3ページ
「ご、ごめん、ハンナ!!ハンナを殺るつもりは全く無かった!」
『それは別にいいよ。出ちゃった手を止めるなんて難しいしね。』
「き、傷……大丈夫なのか?」
私は髪を除けて首筋を見せた。
そこは抉られる前の状態とほとんど同じ状態。
ただ違うのは血のあとが残っているだけ。
『私の身体、変でしょ?』
「…え?」
『一瞬痛みを感じたらね、すぐ回復しちゃうの。まぁ、血は出ちゃったから後が残るけどねー。』
キルアはそんな事がある訳が無いとでも言いたそうな表情。
そうだよね、元はこんなじゃなかったらしいけど。
『ま、今は痛くも痒くも何ともないよ!』
「…ほんとに?」
『あんな傷、痛かったら叫んでるよー。』
「……はー、良かった。」
『で。』
「?」
まだ言いたいことは言ってない。
『どうして殺そうとしたの?』
「…それは、ぶつかったらあっちが来たから。」
『んじゃーキルアが悪いんじゃない?』
「ごめん。」
いいよいいよーと軽く流して手を振った。
そんなに気にしないでほしいけど。
.
ゴンと分かれた後、俺は一人で部屋へ戻る。
あのジジイ、何つー足してんだよ。
これ以上関わると殺ってしまいそうだ。
「おい、待てよ。」
どうやら誰かにぶつかったらしい。
構ってたら面倒くさいことになるからしかとした。
「ぶつかっといてしかとかよ!」
前方から足音が聞こえた。
後方からも二人ほどの走る音が近づいてきた。
あーもー、めんどくせぇ。殺っちゃおっかなー。
そう思って後ろに腕を振るわせる。
『やめて!!』
どこかで聞いたような声。
予想もしない手応えが返ってくる。
手を止める事なんてできやしなかった。
「ハンナ…?」
俺の腕が動いたとき、ハンナは前にいたはず。
何でこんなに素早く移動できたんだ?
ハンナの首筋には、血の痕がついていた。
「ご、ごめん!ハンナを殺るつもりは無かった!」
だがハンナは首の傷を気にする様子も無く、俺に激怒する様子もない。
話を聞くと、ハンナの身体は一瞬の苦痛を感じたら即回復してしまうらしい。
こんな話、普通は信じられない。
いつの間にかハンナは俺に手を振って向こうへ行ってしまった。
…どうしてだろう。
あの時ハンナが男を庇わなければ痛みは感じなくて済んだはず。
あぁ、確かあの時も人を助けたいって言ってたっけ。
まさか、自分の身体で庇って人を助けるって事か?
それは俺からみたらただの馬鹿娘だよ、ハンナ。
何でそこまでして人を助けたい?
…俺には、ハンナの意図が分からない。