V i o l e t !
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月明かりが照らす薄暗い部屋の中。
私の前にしゃがんでいる女の人。
此処はどこなんだっけ。
「ハンナ、大きくなったら、皆を幸せにしてね。」
『うん、がんばる!』
「良い子ねー、よしよし。」
優しく置かれた手に思わず微笑んだ。
女の人はすっと立ち上がる。
「どういうやり方で幸せにするかはハンナ次第。でも、ハンナのことだからきっと……」
『え?』
頭の上に置かれた手から、何か凄まじいものが流れ出した。
足にも腕にも纏わりつく。
でも、この目には見えなかった。
仕事みたいな殺気は感じられなかったから変だ。
『なに、したの?』
「おまじないよ。」
気づいた時には既にドアを開けて出て行ってしまった。
私の、懐かしい人。
.
「ちょっとクラピカ、話があるんだけど。」
俺が話しかけた事に驚いたように向いた。
「別室で。」
「……分かった。」
手で方向を示すと、クラピカは静かについてきた。
試合の重い空気から開放された訳ではなく、静けさが代役を抱えた。
ある程度進んだところで、ぴたっと立ち止まる。
「あんたさー、ハンナのことどう思う?」
「…ハンナは、私の仲間だ。」
「ほんとに?」
くるっと後ろを向いて顔を確認した。
相変わらず真面目そうな顔……ではなさそう。
「あいつってさ、性格良いし強いし、顔も結構…」
「何が言いたい?」
途中でクラピカの声が紛れる。
「俺は好きだよ。」
クラピカの顔が最高潮に歪んだ。
どうやら、やっぱり気に入らないらしい。
「もう用は無いよ。ただ聞きたかっただけだから。」
「………」
「安心した。ハンナを仲間としか思ってなくて!」
少し皮肉が入ったような台詞。
クラピカって単純。