V i o l e t !
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しばらく歩いてようやく到着した場所は、木で出来た家だった。
至って普通の家。
「ここは、あたしら使用人の家です。今夜はもう遅い。泊まっていきなさい。」
「(やったー!)」
ゼブロさんがその家のドアを開けると、ミシミシと聞きづらい音がした。
よく見れば、何度も床と擦った後がある。
古いだけ…ではなさそうだけれど。
「さあ、どうぞ」
「お、おじゃましまーす」
私は少々遠慮がちに入ったが、ゴン達は何も気にしていない様子。
「おーい、戻ったよー」
「…ああ。客人とは珍しいな。」
ゼブラさん以外にも、使用人がいたらしい。
あたしらって言ってたのはこの事か。
その声の主は、階段からのそのそと降りてきた。
「彼はシークアント。あたしと一緒にここで働いております。」
「こんばんは!」
「……ハっ。ゼブロに気に入られるとは大した連中だ。」
ゴンの挨拶には答えもせず、どこかへいってしまった。
こんなとこで働いてる位だから、きっと普通の人じゃないんだろう。
「まっ、ゆっくりしていきな。といってもこの家じゃそうもいかねえだろうがな。」
「……?」
どういう意味だろう。
もしかして、何から何まで暗号付きとか?
単純か、そんな考え。
***
「ハハっ!キルア坊ちゃんに会いに行く?そいつぁ傑作だ。」
ゼブロさんがお茶を出してくれた。
だが、どしんという音には違和感がある。
「生憎こっちは大真面目でなあ!!」
「忠告しといてやるよ。諦めてとっとと帰りな。」
「何だと?」
「ゼブロから試しの門の事聞いてんだろ?だったら此処がどういう所か分かった筈だ。」
確かに聞いていた以上に、ゾルディック家は恐ろしい場所。
しかしキルアに会う為には絶対に避けては通れない。
「簡単に辿り着けない事は分かったよ。でも、俺は帰らない。キルアに会うまでは。」
ゴンはまっすぐにシークアントさんを見た。
「俺、キルアが辛い時に傍に居てあげられなかった。あの時、俺が傍にいたら……絶対にキルアを止めたのに…」
「(私なんて、気づきもできなかった。)」
「キルアは、俺の大切な友達なんだ!」
一瞬の狂いも見受けられず、ただただ聞き入るだけだった。
何か私、このままキルアに会っていいのかな。