中編

□第九話
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緊張の面持ちで頷くと、じゃ、行きまーす。とあまり緊張感のない小さな声が聞こえ。

点火。

きっと俺は必死の形相で付いて行ったに違いない。
爆弾が間近で爆発するような経験が俺の人生上無いもんだからな!

十秒ほど走った時にエタンセルさんは止まり、続いて俺も止まると耳と腹に来る音が響いた。低くてでかくてそのくせどこか高いような気もする爆音。
同時に煙と一瞬の火柱。
一気にさっき俺達が居た場所は騒がしくなり、そして彼は俺にさっきの鋼線を一本外すよう指示した。

外すと数秒後にさっきよりも小さいが遅れてまた爆音。
残りも走り出した彼に付いていきながら外していく。
その度に爆音が響く。

先を走る彼がぼそりと

「あっれー?火薬の量間違えたかな?」

などと言っていたのは聞かなかった事にしたいと思う。
まさか少なかったとかって意味じゃないよな?多すぎたって意味だよな?

………多分。
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