長編
□第一話
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――約束だ。
――ああ。約束だ。
――破らないでよー?
――絶対忘れんなよ!
四人拳同士を軽く合わせて約束をする。
種族がこんなにもバラバラな自分達が出会えた。
この偶然に巡り会えた事を幸せに思うだろう。
人が儚いなんて事は百も承知だし、形を持つものがいつかは壊れるなんてのだって知っている。
寿命だって違い過ぎる。
だからこそ。
いつしかなくなるのだからせめてその時はこんな殺伐とした場所ではなく、笑って逝けるような所で。
「……100年祭か。」
人にとっては一度か二度は世代交代をするであろう時も、自分のような人外の者にはあまり大きな時間の流れではない。
ぽつりと呟いたそれは街中の喧騒に紛れて行った。
「……100年祭、か。」
静かな、獣や虫の声しか聞こえないような森の中。
大きな木の根元にあるものを見据えながら苦々しい声色で呟かれたそれはどこか寂しさを含み。
「…俺はいつまで待てば良い?」
それには虚しさと諦め、しかしどこか希望を捨てきれないような複雑な響きを持っていた。
「……ああ。そうだな。すまん。」
彼以外誰もいないはずであるのだが、彼はそこにまるで誰かがいるような口振りで呟く。
それ以降彼は口を開かずにじっとそこに佇んでいた。