長編

□第八話
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「うわっ!?」


…これが、村に到着したアリエラを出迎えた第一声。



別に酷く貧乏でもない、普通に今まで見てきた場所と同じく祭りの準備に忙しなく動く人間が見られる。
それがシディシの村だった。

入り口から見えるその光景は追い剥ぎをする程貧困に喘いでいるようにも見えず、面倒臭い事にならずに済んだと密かに胸を撫で下ろしたアリエラだったのだが、それとほぼ同時に驚愕に満ちた声が彼女の鼓膜を震わせた。
それが冒頭の声である。


アリエラが声のする方向に目を向ければ、見覚えのない顔。

怪訝そうに見やれば、まだ若く見える村人は視線が合った瞬間に脱兎の如く駆け出した。

それを見送り、アリエラは一つだけため息を吐く。


「…実に面倒だ。」


ぼそりと落とされた言葉は何から同意を得られるわけも無く。
面倒臭さから脅迫と同義であるのだが、力押しでさっくり進めるか?とあまり穏やかでない選択肢を浮上させた。
 
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