長編
□第九話
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どう話されたのかは知らないが、こうあっさり話を信じるのは親がしょうもない程子供に甘いのか、それとも子供の口がよく回るのか…。
ほんの少しだけ考えてから、確実にこれは前者なのだろうと結論づけた。
あんなよくある脅し文句を示して口が回るなどとはお世辞にも言えないし、口が回るのならば多少なりとも頭も回るはずである。
アリエラの力量を知ろうともせずにさして速度も無く真っ直ぐ突っ込んで来るような単純な人間が、頭が回るなどとは言い難い。
結論づけた後にすぐさま、情けない人間だという率直な感想が浮かんではいたのだが、それを口に出すという事はしなかった。
このおばちゃんは確実に怒り狂うであろうし、無駄な手間であるからだ。
別にアリエラは懇切丁寧にこのおばちゃんに対して事実を教えるつもりがあるわけでもなく、ただ竜人についての話を聞きに来ただけである。
この様子では最終手段、袖の下を発動させたとしても恐らく無意味だろう。
再度無駄足だったと判断し、短く息を吐いて半分店内へと向いていた体を反転させて再び入り口へと向き直る。
件の竜人もこの店だけで買い物をするわけでもないだろうとから、手近な人間に聞いてみるかと考えつつ。
「待ちなさい!」
待ちたくない。
叩き付けるようなその声を耳にしてしまってから、考え事などせずにもっと早く出れば良かったかと思うが今更だ。
「最近の若い人は謝罪の一言も無いの!?」
アリエラの方が大分年上である。