ドラマや映画の超短編置き場
生物っぽいので注意
ほとんどが「やまなしおちなしいみなし」
ギャグだったりシリアスだったりジャンルもいろいろ
読了後の苦情受け付けません
勝手に増えます
(最終更新:0105)





1・瑠璃の島(瑠璃/川島)

どこにもいかないで。
そんなありきたりな願いも、叶わずに終わるのだろう。

「かーわしーまさん」
「ん?…ああ、瑠璃ちゃん」
「何してるの?」
「ちょっとね」
「ふーん」
「……………」
「あ、そうだ。三線ね、結構うまくなったんだよ」
「へえ。瑠璃ちゃん頑張ってたもんな」
「うん。今度川島さんにも聞かせてあげるね」
「…楽しみにしてる」

「うん」
「…………………」
「…………………」
「…………………」
「……ねえ川島さん」
「なに?」
「川島さんは、どこにもいかないよね?」
「………いかないよ」
「なにその間!」
「いかないって」

「ほんと?」
「ほんと」
「ほんとのほんとのほんと?」
「ほんとのほんとのほんと」
「嘘ついたら怒るよ」
「嘘じゃないよ」
「そっか、じゃあよかった」
「ん?」
「ほら、川島さんいないとあたし元気でないからさ」
「瑠璃ちゃんには俺以外にもたくさんいるでしょ」

「たとえば?」
「おじさんとかさ」
「だっておじさんは家族じゃん!」
「俺は家族じゃないの?」
「………家族」
「…ああ、じゃあ学校のあの人。ほら、先生とか」
「えぇっ先生?!ないない」
「でも瑠璃ちゃんの悩み事何でも聞いてくれると思うよ」
「そうだけどさ…っていうか、なんで川島さんいない前提なの」
「………あ」

「どこにも行かないって、約束したばっかなのに」
「だね、ごめん」
「……もういやだから」
「うん?」
「瑠璃ちゃんって呼んでくれる人が減るの。もうやだよ」
「…そうだね」
「…………」
「…………」
「……あたし、三味線うまくなる!」
「?」

「誰が聞いてもうまいっ!てなっちゃうくらいにうまくなるから」
「うん」
「だから聞いててよ、川島さん」
「…………」
「あたしの三味線。これからもずっとずっと、あたしがやめるまで」
「……うん」
「ずっとだよ?」
「ずっと」
「今日二回目の約束だからね」
「内容あんま変わんないけどね」

「いいのっ!…あ、もうすぐ学校!」
「遅刻?」
「うん、やばいっ じゃあね!」

「ずっと一緒……か」




2・HERO(久利生/雨宮)


「アイスが溶けるのって、不便だと思わねぇ?」
「…は?」
「いやだから、アイス」
「言っている意味がわかりません久利生検事」
「…お前ほんと可愛くねえよな」
「あーうるさいうるさい。ほら早く仕事!とっとと終わらせてください」
「……堅物貧乏事務官」
「なにかいいましたか」
「なにも」

「……………」
「……………」
「……………」
「……………」
「…アイス食べたいなあ」
「何お前人の話ケチつけたくせに自分で話題掘り返してんだよ」
「別に久利生さんの話題を引っ張ったわけじゃないです」
「じゃあなんだよ」
「ただアイスが食べたいなあって」
「…買ってくれば」

「お金ないです」
「お前アイス買う金もねぇの」
「どうせ貧乏事務官ですから」
「…引きずってんじゃん」
「……………」
「……………」
「……………」
「……………」

「あーもう集中できない!」
「だから買ってこいよ」
「だからお金がないっていってんでしょーが!」
「逆切れするパワーあんなら仕事しろ」
「ほんっとにムカつくこの検事…」
「…はあ、ったく……ほら」

「え?」
「か ね。その代わり俺の分も買ってこいよ」
「いいいいいんですか?!」
「動揺しすぎ」
「あ、ありがとうございます!たまにはいいとこもあるんですね!」
「たまには?」

「じゃあ行ってきます!何がいいですか?」
「無視かよ……スーパーカップで。あ、抹茶な抹茶!」
「了解しました!じゃ!」
ばたばた、ばたんっ
「…ほんと自分勝手なやつ」

……………………………………………………………たばたばたばた、がちゃどたんっ!
「久利生さんお金足りないです!」
「はあ?千円あげたんだから足りるだろ」
「それが玄関先で皆さんに会っちゃいまして…」
「ざっけんな全員の分奢るつもりねぇし。んなら金返せ」

ぐいっ
「…?」
「い、いやです」
「は?」
「久利生さんなら「全員分奢るぜ!」くらいの度胸があると思ってますから」
「いやへんな期待しなくていいから」
「……………」

「…あーもーわかったよ奢ればいいんだろ奢れば!」
「さっすが久利生検事!」
「そういうときだけ検事とか言うのやめない?マジムカつく」
「じゃあ今度こそ!」
「……おー…」

「ハーゲンダッツでしたっけ?」
「…スーパーカップ」
「バニラ?」
「抹茶!!!お前俺の金でハーゲンダッツとか買ったら怒るかんな!」

どたどたどた。



3・ただ君を愛してる(誠人/静流)


「誠人ー」
「なに…って、うわっ」
「おし、っと。油断は禁物!いいのが撮れちゃった」
「なにやってんだよ…」
「んー?誠人の写真を撮ったの」
「そんなの知ってる。そうじゃなくて、何でいまさら」
「いいじゃない別に。みゆきにでもあげようかなぁ」

「…フィルムを返せ」
「別に誠人のフィルムじゃないでしょ」
「でも僕が払った」
「ケチな男って嫌われるのよ?」
「静流には関係ない…ほら、早く返して」
「いやだ」
「かえせ」
「い、や!あたしが何撮ろうと勝手でしょ?」

「僕の人権はどうなるんだよ」
「何いきなり難しい話してんのよ」
「…なんでもいいからとにかく返せ」
「いやだってば!これ現像して部屋に飾るのー!」
「みゆきにあげるんじゃなかったのか?!」
「だって誠人嫌だって言うから!」

「そっちのほうが嫌だ!」
「あーなにそれ!あたしの部屋に飾られるのが嫌だって言うの?」
「…別にそういうわけじゃ」
「いまそう言った!」
「………返してください静流さま」
「敬語でもだめ」
「返せ静流」
「もっとだめ」

「じゃあどうすればいいんだよ」
「んー…この猫耳つけて、猫言葉で言ってくれたら考えなくもない」
「…どこから出したのそれ」
「そんなのどうでもいいでしょ」
「いやよくないって」
「さあ、どうする誠人?」
「…あのさ、それなんていうか知ってる?」

「ん?」
「逆セクハラ」
「なにいってんの?」
「………」
「………」
「………本当に返してくれるのか?」
「ちゃあんとこれつけて、猫言葉で言えばね」

かちゃ。
「……静流」
「うん?」
「そ、そのフィルムを…」
「ふむふむ」
「返して…ください………に、にゃあ」

「……………」
「……………」
「誠人かわいー!!!」
パシャッ
「静流ッ!!!!」




4・陽気なギャングは世界を回す(久遠/成瀬)

「……………」
「……………」
「……暇」
「そうか?」
「暇だよ。だってここには人間しかいないし。っていうか成瀬さんと二人きりだし」
「悪かったな。雪子じゃなくて」
「は?誰もそんなこと言ってないんだけど」
「そう聞こえた」
「…なに怒ってんの?」
「怒ってない」

「いや、苛々してるでしょ」
「…べつに」
「雪子さんと二人きりのほうがよかったのは、成瀬さんの方じゃないの」
「…は?」
「ほんと鈍いね、自分のことなのに。僕でもわかる」
「……雪子といたら会話が続かない」
「僕といてもそうじゃん」
「…久遠」

「あーつまんないの。響野さんでも呼ぶかなー」
「久遠、人の話を聞け」
「聞いてるよ。雪子さんと二人きりにしろって話でしょ」
「いつからそんな話になったんだ」
「…………なるほど。響野さんじゃなくて雪子さんを呼べって事ね」

「……………」
「あ、そういえばさー」
「……そういえば、の前に財布を返せ」
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」

「…ばれてた?」
「ばれてる。お前はホント、無駄な才能を持ってるな」
「無駄じゃないよ。世の中には無駄なことなんて何一つない」
「響野みたいなことを言うな頼むから」
「ていうかそれいうなら、成瀬さんの能力の方が無駄でしょ」
「無駄はないんじゃなかったのか」
「うっわ、屁理屈。ていうか人間嘘発見器って…」
「様々な生活に活かされているぞ?たとえば、今のお前とか」

「?」
「そうやって話をそらしたつもりかもしれないが、とりあえず財布を返せ」
「財布を掏った事に気づいたのは、その能力のおかげ?」
「いや……」
「へえ」
「お前これで何回目だと思ってる。嘘かどうか考える前に気づくだろ」

「慣れってこわいね」
「人事みたいに言うな」
「だって響野さんと雪子さんは気づかないよ」
「響野は特別バカだから」
「あ、雪子さんの事かばった」
「…………」





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