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□歪みだした心
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あいつは…いつから変わってしまったのだろうか――――――




佐和山の城主である三成はここ一週間外へ…いや、自室からも出ていない。…出られないのだ。
それは目の前にいるこの男、重臣である左近のせいだ。

「左近、お前は俺のことが嫌いなのか?
だからこうして外に出してくれぬのだろう?」

「何を言っているんですか殿、最初に言ったでしょう?
俺はあなたに惚れてしまったと…
あなたを俺だけのものにしたいと」

そう、まだ三成が自由だった一週間前、閉じ込められる前に左近は三成にあなたが好きだと想いを告げたのだ。
そして外に出さないのは愛ゆえになのだと答える。

「愛ゆえだと?こんな愛があってたまるかっ!? それに俺は……っ」

「続きは言わなくていいですよ。
俺の愛が伝わらないならそれもそれでいいです。
最もこれは俺の自己満足な行為ですから」

三成の唇に人差し指をあてて、好きな人を他人には見せたくないのでねと言った左近はハハッと渇いた笑顔を見せた。

「お前は他のやつらに嫉妬…してるのか…?
だったら左近、聞いてくれ!
俺もお前のことが好きだ!」

「殿…あなたは何もわかってない。
あなたの好きと俺の好きは違うんですよ。
それにそれはここから出たいから言っている偽りの言葉でしょう?」

嫉妬の部分は否定しないのか…だったら少しはわかってやれているんじゃないのかと三成は思ったが、そのせいか左近の問いに三成は数秒の沈黙…だがその沈黙は数分、数時間にも思えるような長さに左近は感じた。

「図星…です、か」

「違う!そうじゃない!
ただ、なんと言っても今のお前は俺の話に聞く耳なんてもたないだろっ…!?」

「話してもいないうちからそう決めつけているあなたは俺をその程度にしか思ってないってことですよ。
…確か明日は秀吉様に呼ばれてると
おっしゃっていましたね?」

俺が代わりに行きますのできちんと留守番するように、けして部屋の外には出ないようにと言い残し左近は出ていった。

「左近…どうしたらお前は信じてくれるのだ…?」

どうして俺は左近があんなになる前に
もっと前に…あいつの気持ちに気づけなかったのだと
一人になった部屋の中で呟いた。

その頬に一筋の滴がつたっていたことを
とっくに部屋を出ていった左近は知らない。
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