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□君の見たがっていた世界を私も見たくなった
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卿が望んだ、見ることができなかった世界を私が創ろう――――――




「半兵衛よ、卿は今何をしてるのだ。
今こうしている瞬間も、私を見ているのか」

黒田官兵衛は、星空を見上げながら、
先日まで共に策謀を練り、豊臣に貢献
してきた相方である竹中半兵衛のことを思い出していた。

「半兵衛よ、私は迷っている。
このまま豊臣にいては、卿の望みである
みんなが笑って寝て暮らせる世なんて
いつになっても来はしない。」

「今は豊臣より徳川方についた方が、
卿の望む未来に近づくことになるのだ。
しかし、それは『豊臣をよろしく』と言った
卿の言葉を、心を裏切ることになる。」

「私は卿の未来のために卿を裏切るべきか
卿を裏切るくらいならばその未来を
諦めるべきか、ずっと考えているが…
答えは出ない。天才軍師と呼ばれた
卿なら、すでに答えは出ていたのかもしれないな」


官兵衛は、なぜ自分が置いてかれる側で
半兵衛が置いてく側なのか、もしここに
いるのが私ではなく半兵衛だったら、
もっと賢いやり方があると言って、
違う道を選択することができたんではないか…と考えた。

「だが、私にはどちらかの道しか考えられない。
許してくれとは言わぬ、ただ…見ていてくれ。」


「どちらの道を選んでも、私は後悔しないために
全力を尽くそう。…卿のために、と
言えば聞こえはいいが違うな。
全て私自身のために」

「私はずっと卿のためにと言って、
道を選んできた。
だがそれは私がただ間違った選択を
したときの逃げの口実に過ぎなかったのだ」


「私は…見たいのだ。
卿が言っていたみんなが笑って寝て暮らせる世
という戦のない平和な世を…」

「もう卿だけの望みではない。
卿の望みは私の望みにもなったのだ。
その世界を共に見ることは叶わぬ
かもしれないが…いや、共に見よう。半兵衛。」

その時、ひときわ美しく輝いている
星がキラリと光った。まるで官兵衛の
言葉を肯定するように…。


「これでよいのだな。
後は手段だけだが、やはりそれだけは
半兵衛を裏切ることになる。
私には徳川に行くしか手立ては
ないように見える。」

「豊臣はいずれ滅びる。
それもそう遠くない未来…。
卿だったら、それをどうにかするのが
軍師の役目、などと言いそうだが
それは私に向いていない。悪いな。」


『俺は官兵衛殿を信じてるよ』そう言うように、
たくさんの星々がいっせいに流れはじめた。
それはとても綺麗な流星群だった。
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