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□恋人たちの聖なる日
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今日だけはあの人と自分自身に素直でいさせてください――――――




「左近!あの…えっと、ハッピーバレンタインだ!
これを受けとれ!」

「ん?バレンタイン?あぁ、もう14日ですか、はやいですねえ。ありがとうございます」

「ふん!テスト勉強で忙しい俺がお前のために時間を割いて作ってやったんだ、味わって食べるがいい」

「これ三成さんの手作りなんですか?
嬉しいですねえ。後でゆっくり食べさせていただきますよ」

「後だと…!?だめだ!今、俺の目の前で食え!」

「でもね、三成さん。今日はバレンタインですけど学校はあるんですよ?
もう出なきゃいけない時間じゃないんですか?」

「う…!わかった、そうだな、行ってくるぞ。
チョコは俺が帰ってくるまで食べるなよ!」

「はいはい、わかってますよ。気をつけて行ってきてください」


三成を見送った後、なぜ三成は自分の前でチョコを食べるように言ったのか考えた。

「味の感想でも聞きたいんですかね?」

ふつう本命に味見役なんて頼まないだろうと思いながらも、そもそも学校にチョコなんて持っていってないことに気づいた。

「本命どころか義理チョコも持っていってないってことは作ってもいないんだろうな…」

自分だけが三成のチョコを食べれると思うと嬉しいが、尚更、疑問に思う。

「まあ、考えててもしょうがないか。
それより、三成さんが帰ってくるまでに俺もいろいろしないとですね。バレンタインですし」


三成が帰ってきて食べればわかるだろうとテーブルの上を片付けていく。

「今日は特別な日ですし、たくさんサービスしちゃいますか!」



しばらくするとお昼頃に三成は帰ってきた。



「左近、ただいま帰ったぞ。チョコは食べてないだろうな?」

「おかえりなさいって…帰ってきてそうそうチョコですか」

苦笑している左近に三成は更に聞いてきた。


「それでどうなのだ、食べたのか?食べてないのか?」

「食べてないですよ。三成さんのお願いですからね」

「お願いではなく命令のつもりだったんだがな。」

「素直じゃないですねえ、ほんと。
そろそろおあずけ解いていただきたいんですが」

「あ、あぁ、いいだろう。味わって食えよ!俺の愛が……詰まっているのだからなっ……」

「三成さんの愛ですか。嬉しいですね、いただきます」

「どうだ…?美味いか?不味いか?」

「美味しいですよ…とっても。甘すぎず、食べやすいですし」

「本当か…!ならよかった…。
前に甘いものが苦手だって言ってただろう?
その…左近が俺のいないところで食べて捨てたりしないか心配だったのだ」

信用はしているが、味の保証はできなかったからと小さく呟いた。


「捨てるわけないじゃないですか、俺の三成さんが作ったものですよ? 他の誰かが不味いと言っても俺にとってはそれが好物です。
それに、本当に美味しかったですからね。自分で味見はしなかったんですか?」

「左近…!褒めすぎだ…そ、その『俺の』とか恥ずかしいっ…!
味見なんてものはしていないぞ。
自分より先に左近に食べてほしかったからな。した方がよかったのか?」

赤面しながら料理の基本をしていないという三成の言葉にツッコミたくなりながらも、そういうしっかりしてるように見えて少し抜けてるところがまた可愛いとチョコを食べ進めながら感じた左近だった。

「その気持ちは嬉しいですけど、味見はした方がいいですね。
こんなに美味しいんですよ…?
そうだ、三成さんも食べませんか?」

頬を紅く染めたままコクリと頷いた三成に左近はニヤリといやらしい笑みを浮かべていた。


「食べると言ってももとが小さかったし、左近がたくさん食べたからもう少ししかないではないか。
どうするのだ、半分こか?」

「半分こもいいですけど…きっとこの大きさでは崩れてしまって無理ですね」

「ならば無理ではないか…!」

「大丈夫ですよ。確かに可愛い恋人と半分こなんて幸せです。
ですが、それじゃあちょっと細やかすぎると思いませんか?
もともと半分こにするつもりはありませんでしたよ」

「ほう…と、言うと?」

「こうするんですよ……」

左近は残りの僅かなチョコを口に入れ、そのまま三成と深い口づけを交わした。
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