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□迷って愛して
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――――――あなたが居てくれればそれだけで頑張れる




半兵衛は溜め込んでいた執務を片付けるためずっと部屋に籠っていたが、久しぶりに気晴らしということで散策に出ていた。

「あのさー官兵衛殿、なんでついてくるの?」

「卿が逃げぬようにだ」

「はあ〜それって監視じゃん!ちゃんと帰るから心配しないでよ!」

「そう言って先日、元就公の屋敷に行ったきり3日も帰らなかったのは誰だ」

「誰だっけ、そんな人いたっけかな〜?もう俺、覚えてないな〜」

官兵衛の鋭い言葉に、図星だった半兵衛だが適当にはぐらかして説教から逃れた。

「半兵衛、そういえば卿はどこに向かっているのだ?」

「ん?別に目的地があるわけじゃないけど…気分転換の散策だし。まあ、官兵衛殿が一緒じゃ気分転換にもならないけどね〜」

少しからかうように言ってみたが、たまには官兵衛と二人で歩くのもいいと思った。

「私は卿に付き合わされているんだがな。ところで、先ほど卿は散策と言ったが、ならばここはどこだ?」

「うーん、どう見ても森だね。しかもさっきもここ通った気がするし…」

「半兵衛、まさか迷ったりしていないであろうな?」

「大丈夫大丈夫!なんだったら俺がひとっ飛びして上から出口探してくるよ!」

「ほう…では、その飛ぶために必要な武器はどこにあるのだ?」

武器がなければ飛ぶことはできない。ただの散策で武器が必要なんて思っていなかった半兵衛は、武器を城に置いてきてしまっていた。

「俺たち迷子じゃん!どうしようか、官兵衛殿!?」

「私の武器では飛べないからな。このまま進むしかあるまい」

警戒心の強い官兵衛は武器を持っていたが、飛ぶことはできない。せいぜい腕を呼び出すくらいだ。

「官兵衛殿の腕で助け呼んだりできないの?」

「卿の武器は飛ぶことしかできないのか、と同じことだ」

「なにそれ、意味わからないんですけど。もしかして官兵衛殿ってば怒ってる?」

「当然だ。卿と迷っている時間があれば今ある仕事をすべて片付けている。」

もっともなことだが、仕事意外での久々な二人の時間をたとえこんな形だとしても多く得られたのに、そんな言い方をされて少し半兵衛は傷ついた。

迷ったおかげで二人の時間が増えたのに。

「もう!俺の気持ちぜんぜんわかってないね、官兵衛殿は!」

「だったら卿は私の気持ちがわかるというのか?卿も私が考えていることなどわかるまい」

「俺は官兵衛殿の考えてること、わかるよ。はやく帰って仕事片付けたいでしょ?で、はやく秀吉様の天下を…」

「残念だが、外れだ半兵衛。確かに私ははやく仕事を終わらせたいが、それに秀吉様は関係ない。」
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