短編

□お空
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柔らかな草原に横たわれば、視界は空だけで埋め尽くされる。
ここは私だけの特等席。



「こんにちは」

私の空の中に、あどけない少女の顔が入り込む。
くりくりとした瞳が、私の顔を覗き込んでいた。

「お姉さん、何を見てるの?」

純粋な好奇心を含んだその問いに、にっこり笑って答える。

「お空を見てるのよ」
「おそら?」

キョトンとして首を傾げる少女に「そうよ」と頷けば、少女は私を真似て隣に寝転んだ。

「おそら、おっきいね〜」
「でしょ?」

おぉーっと感動したように呟くのを聞くと、なんだか得意な気分になる。
子供の飾らない、純粋な言葉が私の心を浄化していくようだった。

「どうしておそらを見てるの?」
「…お空を飛びたいから」

こんな子供っぽい事が平気で言えるのも、相手が綺麗だからなんだろう。

「自由になって、好きなところに飛んで行きたいの」

日常の柵は、酷く窮屈で 息がしずらい。
現実を生きる中で、体は重く私を縛り付ける。

「ふぅーん」

難しい事は分からないのだろう。
どこか現実感の無い様子で相槌をうちながら、足をパタパタさせていた少女は、ふと何かを思い付いたように声を漏らした。

「こうしたら、おそらを歩いてるみたいね」

そう言いながら、空に足を上げて私の方を見るあどけない笑顔。
それを見て私も真似てみた。

私の空に、そっと降り立つように足を揃える。

「本当ね」

ただ、それだけ。
それだけなのに。







「おそら、飛べた!」
 

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