黄と青の彩色 本

□第6投
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高校生活も早数日。明日は入部試験前日という今日この日。



「ほら美雨、行くっスよ」


『ヤダ』


「ヤダ、じゃないっスよ!」



その日の放課後、机に伏せる美雨の前に黄瀬(←隣のクラス)は立っていた。周りの女子からの視線が痛い。
実際のところ嫉妬の視線が3分の1で、その他は美男美女の二人に諦めの視線を投げかけている。



「早くしないと“仕事”に遅れるっス!」


『“仕事”何て受けた覚えない』


「何言ってんスか!美雨は今日からモデルなんスよ!!」


『声がでかい!!少し黙れ!!』



怒ったように言う黄瀬に、美雨は上目使いで睨みつける。



『モデルったって、お前らが無理矢理契約書にサインさせたんだろ!!』


「でもサインしたっスよね?」


『グッ』



今日は先生の用事があるとかで部活はおろか、午後の授業さえない。なので仕事が入ったらしい。
本当だったら、この後桐皇にでもお邪魔して部活に参加でもさせてもらおうかと思っていたのに。



「ほーら、駄々こねてるのも可愛いっスけど、もうそろそろ迎えがくるっス」


『迎え?』


「(可愛いはスルーっスか)そうっス。雅さんがくるんスよ」


『ゲッ』



“雅”彼女のせいで美雨は無理矢理芸能界へと足を踏み入れることになった。(詳しくは5.2投参照)



『嫌だ行かない。桐皇に行くんだ』


「…桐皇行って何すんスか」


『バスケしに行く』


「させるか」



黄瀬は無理矢理美雨を立たせ、横にあったカバンをひっつかむと昇降口に向かって歩き出した。



『離せ離せ離せ』


「なんか呪いの言葉みたいなんで止めて欲しいっス」


『誰が止めるか』



『離せ離せ』とブツブツ呟く美雨を引っ張り、とうとう外に連れ出した。



「黄瀬!遅いぞ全く」


「すみません!美雨が駄々こねてて」


「おやおや、大きな子供か君は」


『お前がだ!』



やれやれと肩をすくめる雅に蹴りを入れたくなる。そんな雅の横に見慣れない男性が一人と女性が一人。



「あ、あやめさん。お久しぶりっス」



黄瀬はその女性の方に挨拶をした。



『…涼太、その女の人誰?』


「ああ、この人は「キミが美雨ちゃん!?」ゴフッ」



突然女の人(あやめって名前、苗字…?)が黄瀬を押しのけて美雨の前に割り込んだ。



『…誰、ですか?』


「ああごめんなさいね。アタシ、こーいう者です」



渡された名刺には【綾目 夏】と書いてあった。



「アタシ、そこの黄瀬のマネージャーやってるの。これからよろしくね?」


『よ、よろしくお願いします…』



本当はこれっぽっちもよろしくなんてしたくない。だがここは愛想笑いで返しておく。



「愛想笑いはせんほうがええでー」


『!?』



突然頭の上に手が載せられた。そのままワシャワシャと撫でられる。



『…』



美雨は無言で後ろに向かって足を振り上げる。



「おぅ!?」



呻き声が聞こえた。



「い、いきなり何すんのや…」


『それはこっちのセリフだ。つーか誰だアンタ』



後ろを振り返れば脇腹を押えて呻く男性がいた。



「わ、ワイは【今吉 凪】アンタのマネージャーや」



まんま大輝が通ってるトコの主将に見えてきた。喋り方から雰囲気、顔つきも全て似ている。つーかそっくり。





「ま、これからよろしく頼むや、美雨チャン」


『チャン付けんなキモイ』



結局マネージャーは変えられず、そのまま車に乗って仕事場へと向かうハメになった。




  
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