黄と青の彩色 本
□第1投
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「美雨」
そう名前を呼ぶのはオレの彼氏………なんて、甘ったるわけではなく、血のつながった双子の兄、青峰大輝。
『…ノックぐらいしてよ』
そして、現在地はオレの部屋。奴はノックもせず部屋の中に入って来た。
「んなモンいらねぇだろ」
『親しき仲にも礼儀ありって言葉知らない?バカ兄』
「るせ」
ドカッ、とベッドに座ると、オレの目の前に広げられている制服を睨んだ。
「…んで海常にした。わざわざここから電車で通うのかよ。オレは桐皇にしろって言ったよな?」
『誰が好き好んで兄妹同じ学校に通うと思う?』
「…もっと別な理由があんだろ」
こういうとき鋭い大輝は嫌いだ。
『…はぁ、兄妹なんだから知ってるよね?オレが比べられるのが嫌いなことぐらい』
「…オレと比べられるのが嫌だったんかよ」
『そのとーりだボケ』
いいからさっさと出ろバカ兄、と部屋から大輝を締めだした。以外にもすんなり出てくれた大輝。
「桐皇は気にくわなかったのかよ」
帰ったと思ったら部屋の前に居た。
『…まぁ。チームプレーがない』
「帝光もそうだったじゃねぇかよ」
『オレが変えた』
バスケは個人競技じゃない。団体競技だ。扉の向こうにいる大輝にそう言えば、何も言わずに扉を閉める音がした。
『……んでわかんねーかなぁ』
昔はああじゃなかった。
そう呟きながら、棚に飾ってある写真立てに手を伸ばした。そこには、今では見なくなった大輝の笑顔。
横にはオレと、隣に住むさつきも映っている。みんな笑顔でバスケットボールを掴んでいる。
『バスケは笑ってするモンだってオレに言ったのは、誰だよ…』
写真立てを棚に戻し、制服をハンガーに通して壁にかけると、さっさとベッドの中へ潜り込んだ。直後、震えるケータイ。
『…誰?』
メールだ。
『栗(りつ)か…』
メールの内容は駅の集合時間だった。
『ん?』
下の方にも何か書かれていた。
『(“海常にもキセキの世代が来るんだって” って…誰だっけ…)』
返信も打たず、美雨は夢の中へと旅立った。