黄と青の彩色 本

□第4投
1ページ/2ページ






「じゃ、1週間後に入部試験をするわよ!」



翌日の放課後練習で監督がそう高々に宣言すると、周りにいた新入部員(体験期間中)は、はぁ? という顔になった。
一方二年、三年のセンパイは「ああ、また突然か…」と呟いていた。またって去年も一昨年もこうだったのか。



「え、入部試験なんてあるんですか?」


「正確にはどの軍に入れるかのテストよ。海常には男女ともに1軍から3軍まであるわ。そこのどこに入れるか決めるの」


『へぇ』


「ちなみに、こういったテストはコレ以外に年に5回あるの。実力があれば一年でも1軍入りは夢じゃないわ」



監督の話を聞いた限り、1軍 2軍 3軍ではかなり違う扱いになっていた。

まず優先的にコートで練習できるのが1軍。主に三年のレギュラーとベンチメンバーで構成されている。
この中には実力が認められた二年が混じっている場合もあるらしいが、試合に出れる確率は少ないらしい。

2軍は週2回全面で練習できる。それ以外の日は男子と共に第二体育館で練習。1軍に入れない三年と一軍に入れる可能性のある二年で構成されている。
オレら新入生が入れる限界の確率が最も高いのはここだ。まぁ、入ったとしても昇格試験までは動けないが。

3軍は2週間に1回だけ、全面で練習できる。1軍、2軍に入る実力のない者全員が此処に入っている。いつもは男子と第三体育館で練習。
特にこれといった特徴がないとしたら確実にここ入りになる。試合に付いて行くことはおろか、応援さえできないそうだ。



『(3軍に入れば、次の昇格試験まで上にいけないって感じかな…)』



別にどの軍でもバスケが楽しめればいい。美雨はそう考えていた。



「試験は男子と合同で行うわ!各自準備しておくように!じゃ、解散!」


「「「「『ありがとうございましたっ!』」」」」



解散した後、新入生たちは片付けを開始する。いくら体験期間中といえども、新入生は格下。日本の縦社会がマジマジと見てとれる。
だが、こうして最後まで残るのには理由がある。なぜなら解散から1時間以内なら、コートを使う事が出来るのだ。
それは勿論先輩もそうなのだが、三年は一番大きい第1体育館、二年は第二、一年は一番小さい第三で行うのが裏規則となっている。
個人練習の場合は、練習していた人が片付けをする。一年は借り出されるとこはない。今まで使っていた体育館を片付ければそれでいいのだ。



「美雨〜、第三行かない?」


『行く。待ってて』



エナメルに荷物を詰めると、第一体育館から出た。










『…先客が居る』


「誰だろ……」



中を覗いてみると、そこにいたのは金髪の男。……黄瀬涼太だ。



『なんでいるのかなー…』


「あ、美雨!」



此方の存在に気付くと、ボールを脇に抱えて黄瀬は走り寄ってきた。他の新入部員が居なくて助かった。



「美雨も練習スか?」


『見りゃわかるでしょ』


「青峰っちはあれからどーしてる?」


『特に何も。一応桐皇の1軍入りしたみてたいだけど』



ここに来るまでの間、ケータイを確認するとさつきからのメールに1軍入りしたことが書かれてあった。
つーか正式入部早くないか?ま、アイツは部活動推薦で入ったしなー。勉強はてんで駄目だし。



「やっぱすごいっスね、青峰っちは」


『一応オレの兄貴だし。1軍にいてもらわなきゃ困るよ』


「ね、今度また家に行ってもいいっスか?勉強とバスケ教えてほしいんス」


『構わないけど。ただし、変装して来てよね。オレは必要以上同姓に嫌われたくない』


「りょーかいっス!」


「…ねーお二人さん、私の存在忘れてません?」


「あ、すいません忘れてたっス(と言うか出てってくれないっスか。オレと美雨の邪魔しないでほしいっス)」


『別に、忘れてないけど。どうかした?』


「やっぱ美雨は違うね!(嫌だね、誰が出ていくか。黄瀬が出てけばいいでしょ)」



美雨の知らない所でバチバチと火花が散る。



『涼太、半面借りるよー』


「どーぞっス」



ボールを一つ掴むと、リングの前に立つ。



「アレ、練習するの?」


『うん、リングの下に立ってて』


「了解」



リングの下に移動する栗。まずはフリースローラインに立ち、ボールを上に放った。





バシュッ





ボールはリングに掠ることもなく、綺麗に弧を描いてリングに吸い込まれるようにして落ちた。



「流石美雨っスね」


『まーね。栗、次行くよ』


「OK」



栗からボールを受け取り、ハーフラインに立つ。



「そんなところから入るわけ…」


『入るんだなぁ』





バシュッ





「えっ!」


『な?』



ボールは綺麗に、リングに掠ることも無く入った。



『流石、真太郎直伝は凄いな』


「(ムッ)」



栗からボールを受け取ると、涼太の方を向く。



『涼太』


「何スか?」


『相手、してくれない?』


「いーっスよ!」



持っていたボールを投げ捨て、美雨の前に立ちはだかった。いくら身長の高い美雨といえども、男子の黄瀬と比べたら低い。



『じゃ、オレからいくよ』


「どーぞ」



途端、二人を纏う雰囲気が変わった。




  
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ