黄と青の彩色 本

□第5投
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翌日の放課後。女子バスケ部は何故かミーティングルームにいた。前に立っているのは監督ではなく主将だ。



「今日から新入生も晴れて正式部員。これから海常の女子バスケ部員として頑張ってもらうからね」


「それじゃあまず自己紹介から。前から順にどーぞ」



前から。となるとオレは最後の方かー。後ろに一人いるし。



「1−B 鳫澤沙希(かりざわ さき)です。小・中ともにバスケをしていて、フックシュートが得意です。よろしくお願いします」


「同じく1−B 荒垣佳奈(あらがき かな)です。部員としてではなく、マネージャーとして支えていきたいと思っています」



ああ、あの時制服のまま壁に寄りかかって見学していた子だ。



「1−C 羽瀬詩織(はせ しおり)です。バスケ経験はありませんが、よろしくお願いします」


「同じく、1−Cの戸崎杏奈(とざき あんな)です。リバウンドが得意です。よろしくお願いします」



リバウンドが得意と言う割には、とても低身長だと思う。(美雨は低身長と言いましたが、165pありますよ)



「1−D 須藤真奈美(すどう まなみ)です。妹との連携が得意です。よろしくお願いします」


「1−A 須藤愛華(すどう まなか)です。姉との連携が得意、です。これからよろしくです」



うわ、双子だ。顔から声、背丈までそっくりだ。って言うか同じクラスなんだ。あとで話しかけてみようか。



「1−D 白羽慈(しろは めぐむ)です。長距離シュートが得意です。よろしくお願いします」


「1−A 滋野栗です。中学からバスケをやっていて、ハーフコート内ならどこからでもシュートが打てます。これからよろしくお願いします」



きた、オレの番だ。



『同じく1−A 青峰美雨です。ストリートで使うようなプレイ全般が得意です。これからお世話になります』



さて、残すはあと一人だ。



「同じく1−A 山村亜耶(やまむら あな)でぇす。中学では主将を務めてMVPや得点王とかいろんな賞を貰ってぇ、向かうとこ敵なし、みたいなぁ?
正直言って、そこのキセキの世代の青峰大輝の妹とか言ってる奴とか、先輩方に負ける気はないんで。以上でぇす」



ミーティングルームの空気が凍りついた。主に先輩のいる方からの殺気紛いがヤバい。最後の方に座るんじゃなかった…!
しかも何、オレに負けないとか言ってるじゃん。見学の時はいたけど、一度もボールに触れてねーじゃん。
つーか、完全なるブリッ子始めて見た。うわー、今でも居るんだね。語尾を以上に伸ばす奴。



「……今年は10人の新入生が入ってくれた。どーも」



亜紀が明らかに機嫌悪そうに言うと同時に、ガタンと大きな音を立てて椅子に座った。その音に夢はため息をつく。
そして美雨の後ろに座り、手鏡片手に金色の髪を整えている亜耶に近づいて、手鏡を取り上げた。



「ちょっとぉ、せんぱぁい、それ返してくれません?」


「…悪いけど、私は君みたいな人間は嫌いなんだよね。きっと私だけじゃなくて、此処にいる皆、ね」


「何ですかぁ?あ、亜耶の実力に嫉妬しちゃったとか?」


「いや、それは無いな」



明らかに機嫌悪そうな声で亜紀が口を挟む。それに夢も頷く。



「もし私が嫉妬するんだとしたら、君の前に座ってる美雨ちゃんかな」


『はい?』


「そんな子のドコに嫉妬する要素があるんですかぁ?亜耶の方が実力は何倍も上だと思うんですけどぉ?」


「だってよ、美雨ちゃん」



夢の手が右肩に乗る。



『…先輩、ちょっといいですか?用が出来ました』


「どーぞ。君がそう言うのを待ってたよ」


『じゃ、お言葉に甘えて』



その場に立ちあがると亜耶の方に向き直り、その胸ぐらを掴み無理矢理立たせる。



「ちょっとぉ、何すんの『うるせェ黙れブリっ子野郎』へ?」


『何自分可愛いとか思っちゃってんの?あァ?行っとくけどまだ栗の方がマシな顔してるっての』


「え、ちょっと酷くな『黙れ栗』ハイッ!」



低く唸るような声で言われた言葉に対し、栗はビシッと敬礼ををして返事をした。さながら軍人のようだ。
これは決しておふざけでやったわけではない。この状態の美雨に逆らってはいけないという事は、とっくの昔に経験済みだ。
こーいう場合、何もせず流れに身を任せているのが正しいやり過ごし方。それがここ数年で身に付けた事だ。



『オレは今虫の居所がわりぃんだ。そのふざけた口調を止めろ』


「フザケタ口調って何よぉ!てゆーか、手離してくれない?痛いんだけどぉ」


『…お前は日本語通じねぇのか?つーかオレに勝てるとか意味分かんねーことほざいてんじゃねぇよ。
オレはお前なんか大会で見た事ねぇ。ウソつくならもっとマシなウソつくんだな』



胸ぐらから手を放し、夢に一言断りを入れてその場を後にしようとした。そう、しようとしたのだ。




   
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