-桜が生まれる日-
□〈シグレという名〉
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翌日。いつもはシグレがたたき起こしに来る頃合いなのにそれがなかった。
シグレが寝過ごすなんて珍しいと思いながらスオウはシグレが居る部屋に声を掛けた。
「シグレ。稽古が始まる前に飯食おうぜー
・・・シグレ?・・・入るぞ」
スオウが襖を開けるとそこには誰の姿もなかった。
荷物があることから出ていったわけではないみたいだ。
ただ事ではないと感じたスオウは父親の部屋へ足を運んだ。
「親父! シグレがいねぇ!!」
「・・・そうか」
「そうかって・・・なんか知ってんのかよ!!」
「・・・。スオウ。秋雨組の次期頭領が姿をくらましたことは言ったな」
「それがなんだよ!」
「人物絵を見てお前は何も思わなかったか?」
そう言って前に見せてもらった人物絵をみる。
どこかでみた顔つきだと思いだすのと同時に、彼女はシグレに似ていると感じた。
「似てる・・・もしかして・・・!」
スオウは人物絵を父親から受け取り道場から急いで出ていった。
父親は黙ってそれを見送ると、人物絵とはまた別に紙きれを出した。
その紙きれには次期頭領の名『時雨』と書かれていた。
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