-桜が生まれる日-

□〈その花の名は〉
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「スオウ。助けに来てくれてありがとう。お前は十分強いよ」



「シグレ・・・ほんとに、良かった」



 ボロボロになったスオウはすぐ組員に手当をさせた。
大事には至らなかったが、体も腕も顔も包帯まみれだ。
落ち着いて話が合したいと縁側に通される。時雨は包帯まみれのスオウを見て笑った。
笑い過ぎだというスオウも時雨につられて笑ってしまう。



「スオウ。本当にありがとう。」



「何言ってやがる。相棒が突然消えたら探すだろ。
・・・親父はお前の事知ってんのか?」



「あぁ。出ていった先で拾ってくれたのがお前の父上だったから。
連れ戻されたくなくてかくまってもらったんだ」



 その話を聞いてスオウは人物絵を見せられた時のことを思い出した。
あれは自分に何もするなという意味ではなく、
時雨を守るための言葉だったと今わかり大きなため息をした。



「あんのクソおやじ・・・」



「・・・スオウ。本当にありがとう。
・・・私は、ずっと逃げていた。この組を背負うのが怖くて、
周りの期待に答えれるか不安で仕方なかったんだ。
でも、お前のお蔭で決心がついたんだ」



「オレは何もしてねーぞ」



「同じ様な悩みを持って、そいつがちゃんと悩みと向き合う姿を見たら、逃げてる自分が恥ずかしくなった。
・・・私はまだ頭首にはなれないけど、いつかなる時、お前もいてくれたら嬉しい。

なぁスオウ。二人でこの町を守って行かないか?」



 時雨が言っているのはきっと今ではないのだろう。いずれの話。遠くない未来の事。
 スオウは自分が道場を継げるかまだ分からないが、
そんなことよりもこの町を守りたいという思いはあったから。素直に頷いた。



「一緒に、強くなって、一緒にこの町を守ろう!」



「・・・一緒には無理かもな。
私はいずれこの組織が裏側に行く気がするんだ。
キレイじゃないこともたくさんあるし人にとっては誇れることじゃないこともするだろう。

だからスオウ。私は裏側をお前は表側を守ってほしいんだ」



「・・・それは仕方ない事なのか?」



「あぁ。そうだ」



 共にというのは難しい。その言葉に寂しさを覚えたが
一生会えないというわけではないと思うと頑張れる気がした。



「親愛なる相棒の頼みだ。きかねぇわけにもいかねぇよな」



 スオウの晴れやかな笑みに時雨は安心したように笑った。





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